「もっと頑張る」ではなく、「もっと上手に」|100マイルレースの哲学に触れた2日間

憧れのLAKE BIWA 100へ

6/6(土)-7(日)、丹羽薫トレイルキャンプ・LAKE BIWA 100対策編に参加してきました。

会場は鈴鹿山脈。

国内屈指の厳しさと、温かなホスピタリティで知られる100マイルレース、LAKE BIWA 100のコースの一部が舞台。

私はまだ100マイルレースを走ったことがない。そもそもLAKE BIWAは、他の100マイルレース完走経験がエントリー条件。いつかは挑戦したいと思いながらも、今の私にはまだ遠い世界。

それでも、丹羽さんに会ってみたい。指導を受けてみたい。評判の良いキャンプを体験してみたい。

そして「いつか100マイル」のランナーでも歓迎してくれると聞き、チームメイトの貴子さんを誘って関東から参加することにしました。

強い人たちの中へ飛び込む

キャンプは今回で13回目。現地に着くと、リピーターや実力者たちで賑わっていました。

講師は丹羽薫さん。国内外のウルトラトレイルで活躍し続けるトップランナー。

サブ講師は板垣渚さん。サポートには板橋黎華さん。さらに丹羽さんのご主人や愛犬タッカー、エイドでは妹さんや甥っ子さんたちもサポートに入る。

家族ぐるみで作り上げられている温かな空気も、このキャンプの魅力でした。

頑張らないけど、サボらない

サロモンのザックとニューカーブのポールをレンタルし、練習がスタート。

1日目はグループ走をしながらの実践講習。

・ポールの使い方
・ポールなしでの登り方
・下り方のコツ
・ロングレースでの走り方

などを学びながら進んでいく。

合言葉は、

「頑張らないけど、サボらない」

コースは噂通りのテクニカルさ。細尾根。激登り。激下り。あちこちから滑る音が聞こえるほどのハードな地形。

その中で丹羽さんは、一人ひとりのフォームを見てアドバイスをくれる。私も走りを見てもらいましたが、教わったことを意識するだけで、特に下りが驚くほど楽になりました。

身体の使い方ひとつで、こんなに変わるものなのか。

補給や栄養についてもたくさん質問でき、とても濃い時間でした。

100マイルは「管理のスポーツ」

夜は座学。テーマは100マイルレースの戦略。

・タイムチャート作成
・心拍管理
・補給計画
・脱水対策
・胃腸トラブル対策

どれも印象的でした。

100マイルは根性だけでは完走できない。速さだけでも完走できない。

むしろ、

どれだけ崩さずに進み続けられるか。

その管理能力が問われる世界でした。

心が動かなくなっていた

実はこのキャンプに参加した理由は、技術を学びたかったからだけではありませんでした。

2月のニュージーランドのレースを終えてから、どこか燃え尽きていた私。
体調も万全ではない。
レースへの意欲も、以前ほど湧いてこない。

少し前には人生初のDNFも経験した。
今年のハセツネCUPへのエントリーも見送った。

ニュージーランドで102kmを完走したのも、
昨年のハセツネCUPを完走したのも、

本当に私だったのだろうか。

あの時の自分が、遠い誰かのように感じていた。

私は挑戦する気持ちを失ってしまったのか?
山が、走ることが、好きではなくなってしまったのか?

そんなことを思うほど、自分を信じられなくなっていました。

それでも、楽に走れるようになれば、別の世界があるのではないか。
そのヒントがここにあるのではないか。

そんな思いを抱えての参加でした。

「もっと頑張る」ではなく、「もっと上手に」

2日目は20kmの実践ミニレース。

雨と強風。
最低限のマーキング。
100マイルの一部を想定しながら進む。

スタート前に丹羽さんに言われたのが、

「余力を残して終わること」

でした。

私は心拍を見ながら、攻めすぎず、でもサボらず、淡々と進む。

結果として、これまで経験したことがないほど余裕を残してゴールできた。転倒もなし。

泥だらけの参加者が多い中、白いTシャツもザックもほぼ無傷。

友人には、

「一人だけ違うコース行ってきたんちゃう?」

と言われたほど。

慎重すぎたかもしれない。でも、それで良かったのだと思う。

挑戦する力は消えていなかった

このキャンプで感じたのは、

100マイルレースを走り切るための考え方は、人生にも通じるということだった。

頑張りすぎれば壊れる。
燃え尽きる。

だから必要なのは、

「もっと頑張る」

ではなく、

「もっと上手に」

強い人だけが続けられるのではない。

工夫した人が長く続けている。

私はやる気を取り戻したというより、

もう一度進む方法が見えた。

そんな感覚でした。

ニュージーランドで102kmを完走したのも、
ハセツネCUPを完走したのも、

確かに私だった。

このキャンプを境に、静かに、でも確かに、次の山へ向かう気持ちが戻り始めているのを感じています。

それでも人は100マイルを目指す

印象に残っている渚さんとの会話。


「100kmと100マイルって、辛さどれくらい違いますか?」

渚さん
「例えるなら、100kmはワサビがたくさん乗ったお寿司。100マイルはネタの下に大量のワサビだけ。」

……シャリは?

もはや寿司ではない。

そんな世界なのに、多くの人が夢を見る。挑戦する。

きっと、ただ辛いだけではないから。
その先に、それぞれの願いや景色があるから。

私はこの身体と心をめいっぱい使った先にある、もっと深くて広い世界を見てみたい。
とんでもない絶景を見てみたい。

だから。

私もいつかは100マイル。

そう思わせてくれる2日間でした。

運営の皆さん、参加者の皆さん、一緒に参加してくれた貴子さん。
貴重な時間をありがとうございました。