遠くへ行きたい〜山旅編〜
一年に一度は飛行機に乗って遠いところの山旅にも挑戦!ということで、昨年の九州に引き続き2回目の今年は四国へ。
念願だった石鎚山、標高1,982m、西日本最高峰。日本百名山、日本七霊山の一つとされています。愛媛県西条市と久万高原町の境界に位置するこの山のお陰で、西条市など近隣の地域は災害が少なく、「山が守ってくれている」土地なんだとか。素敵すぎる山。
土小屋ルート(初級)で母と一緒に行こうかと思っていたのですが、母が旅行の3日前に足を捻挫。母を道後温泉に残し、私は本来行きたかった成就社ルート(中級)を取ることに。こっちのルートで歩いて来なさい、との神様のお導きでしょうか。
連続する鎖場に覚悟を決め、いざ参らん!5/22(月)
神聖な一日の幕開け
前日にレンタカーをして、朝5時半に松山市内を出発。まずは本社にあたる石鎚神社の拠点、口之宮本社へ。石鎚神社は石鎚山を神体山とする御社です。1時間ほどで到着。
早朝の神社って本当に神聖で良い気が流れている。何の穢れも無い澄み切った小川の清流のような透明感とキリッとした空気。神社って、自然と人間の生活の境界となるような場所だなと思っていて、人工物の美しさと自然の美しさが見事に溶け合った空間だなと思います。
瀬戸内海、しまなみ海道を見晴らす丘に荘厳な本殿、庭園のように手入れの行き届いた杜。
私がフラフラと覗きに行ったところ、早朝で開館時間はまだまだ後にもかかわらず、その場にいた神社の方がなんと会館を開けてくれて!本当に愛媛の方は優しい。石鎚山を描いた素敵な絵葉書や御塩などをいただきました。
毎日参拝されているという男性にもお会いしました。ここで毎朝浄化されていたら心身ともに健康そのものだわ。石鎚山に登る前にぜひ訪れたい場所。宿泊も出来るそうなので、前泊などに利用しても良いかもですね。
山が始まる
朝ごはんを食べたり身支度を整えたりしつつ、ロープウェイ乗り場へ。本社から車で30分ほど。ロープウェイを使わずに下から登る案も頭をよぎりましたが、鎖場に挑戦予定なので体力と精神力を温存しよう。ということで8:40の始発に乗ります。
とても良いお天気で、遠くの山並みまで見渡せます。雲が湧く前に山頂へ行くぞ!
ロープウェイ山頂駅から歩きやすく整備された山道を20分ほど歩くと7合目の中宮成就社へ。あっという間に7合目に着いてしまいました。苦労しないといけない気がするのは私のパーソナリティのせい(PCM紫パシスター)、今回は良しとするのだ。
修験道の開祖、役小角が開いた石鎚山。山頂が背景になる素晴らしい見返遥拝殿で、山岳文化の繁栄と今日の登山が無事に叶うことを願い、感謝の山寄付も済ませ、本格的な登山道へ。行って参ります!
豊かな森
植生が豊かで道中いろいろな植物が。各所に解説板付き。学校登山などもある山だそうだし、とても大切にされている山なのです。新緑の気持ち良さ、成長していく力強さと爽やかさを持つ季節。大好きだ。
生と死の鎖場
そして現れる鎖場!遂に来ました、試しの鎖(48メートル)。これから先、一の鎖、二の鎖、三の鎖、と続く、その一番最初の鎖場。北アルプスなどだったらきっと梯子が掛かっているような場所に、大きな鎖。ここには梯子なんて掛からないのです、だって行場だから。でも全てに迂回路があり、自信のない人や苦手な人はもちろんそちらへ。
最大斜度は70度ほどらしいのですが、体感的にはほぼ垂直。早速取り付いたは良いものの…。こ、こわい!(当たり前)。アドレナリン大放出で一気に緊張状態へ突入。手を離したら大怪我は免れない鎖場、強烈に自覚する「死ぬかもしれない」という恐怖。目の前のこと以外は全て消し飛んでいく。今まで培った登山技術を駆使し、必死に手足を動かし、最後はただただ「私なら絶対大丈夫」と己を信頼し、一歩ずつ確実に前へ、上へ進む。
登り終えて待ち受ける大展望。そして生還した奇跡、命の、生の手ごたえ。
険しい岩場にかかるこの御鎖にすがる時こそ、邪心を捨て、無我の境地を体験する、まさに命がけの行場となります。
石鎚神社HPより
死ぬかもしれない場に直面したらだいたいのことはどうでも良くなり、生還した後はより「生きている」という感覚が強くなる。生きているこの瞬間は奇跡そのもの。それが分かったこれから先、なんのためにこの奇跡の命を使いますか?
死の疑似体験をすることにより、自分の人生を見つめ直す。まさに修行。強烈すぎて痺れるけど、強烈だからこそ、魂に刻み込まれる感覚。
しかし本当に怖いのはここから。実は試しの鎖は下りの鎖(19メートル)があり(上ってしまったら迂回路なし)、下りの方がもっと怖い(後の鎖場も下れるけれど、下りはほぼ全員迂回路に行く)。命からがら下りました。あー良くやった。
そしてまたしばらくは穏やかな登山道。鳥の歌声とともに歩を進めます。
山頂に近付くと、核心部へ。三つの鎖場。頑張って行かなくても迂回路を使っても良いのでしょうが、修行好きだし(!)、全部やり切りたい。「あの時行っておいて良かった」と後悔を残さずにいたいから、全部に挑戦する以外の選択肢は無し。
二の鎖のわずかにハングアウトしてる難所では、前を行くカップルの女性の方が泣き叫んでいました。「何でこんな怖いことしなくちゃいけないのー!!!」と。本当に恐ろしいところですよ。自分で行くと決めて行くところ。誰かに連れられて来ている感覚でいると泣くことに…。人生も全てそうだよなぁ。
天空の境地へ
一の鎖(33メートル)、二の鎖(65メートル)、三の鎖(68メートル)(←全部怖い)を無事越えると、山頂へ!やったー!
本当の山頂は、南東側に続く稜線の先の天狗岳。ナイフリッジなスリル満点の稜線を歩きます。
海のイメージが強かった四国ですが、見渡す山並みは日本アルプスの3,000メートル級の世界を思わせる。今度はいつか何日かかけて縦走してみたいなと思いました。
景色を堪能しながら少し休憩し、山頂の山小屋に立ち寄った後は、後ろ髪を引かれながら下山道へ。
下山は鎖場を迂回し、順調に下りました。途中で名物のあめゆ(水あめと生姜を合わせた山の栄養ドリンク)をいただき元気をチャージ。
成就社まで辿り着き、宮司さんとたまたまお話し。全ての鎖場に挑戦し踏破したことを伝えたところ、「それはそれは!神様のお下がりですが、きっと良いことがありますよ」と、お菓子を持たせてくれました。ここでも受けた優しいおもてなし。こんなことを当たり前にしてくれる人がたくさんいる愛媛県ってすごすぎる。大ファンです。
今回の全体の旅行記はこちら→愛媛 松山 道後温泉【おもてなし県ナンバーワン】ゆったりのんびり旅行記
石鎚山、すごく良い山だったので絶対また来たい。鎖場全挑戦して良かった!←生きて帰って来れたからこその感想ですね(逆に後からちょっと怖くなり、過去の事故などを調べてしまったのは実はあるあるかも…?)。次も鎖場に挑戦するかはまだ分かりませんが!🤭
人生は修行
霊山とか修行とかすごく好きで興味ありなんですよね。又聞きではありますが、修行の本質についての現代の生体学的な見解の一説。修行というとなぜ山に行くのか。海ではなく。それは、少し高度のあるところで体に負荷が掛かることによってミトコンドリアの活性が上がるから。ミトコンドリアは細胞のエネルギーを作り出すエンジンのような存在で、活性が上がるということは、脳や臓器やあらゆる体の機能が上がるということ。つまりそれが…、開眼、ってことですかね…?。昔から霊場、霊山、修験の山というところは、その高度が共通しているんだとか。へぇーーーーー!!!興味深すぎる!!!
今こんな本を図書館で借りてきて読んでいます。そのうち私も修験者になっちゃったりして。
まだ見ぬ絶景を求めて。私の山旅という人生は続く!