旅の3日目。2日目はこちら⇒北アルプス縦走3日間【薬師岳~五色ヶ原】雲上の楽園 Day2 2023.9.25
この日は五色ヶ原山荘を出発し、一の越を越えて、黒部ダムまで下る、コースタイム9時間の一日。9/26(火)
◇ 旅の行程 ◇ 0 東京 ⇒(夜行バス)⇒ 折立 1 折立 ⇒ 太郎平 ⇒ 薬師岳山荘 ⇒ 薬師岳 ⇒ 薬師岳山荘 2 薬師岳山荘 ⇒ 薬師岳 ⇒ 越中沢岳 ⇒ 五色ヶ原山荘 3 五色ヶ原山荘 ⇒ 一の越 ⇒ 黒部ダム(室堂)
靄の早天
起床は4時、出発5時。寝るのが早すぎて(19時)夜中に目を覚ましてみたけど、星は見えず雲が掛かっている。この日は日の出も拝めそうに無い。
この日の難所はザラ峠、そこまでの下りがすべる。あとは大丈夫。お昼から雨だけど今からなら黒部ダムにはお昼には着くはずだから頑張ってね。と山小屋のスタッフさんに優しく送り出され、暗闇の中歩き出す。雨は降っていないけれど、靄が辺りを埋め尽くしている。夏の暑さは消え去って、涼しいを通り越して肌寒い空気。
ザラ峠への下りに差し掛かった頃に空が明るくなってきた。切れ落ちた迫力のある立山カルデラの景色。戦国武将の佐々成政が真冬にここを越えて行ったとか行かなかったとか。30分ほどで噂のザラ峠へ。
そして上りに取り付く。立山側から来ると万人を苦しめるこの道、確かにすごい傾斜でザレてて下りだと滑り落ちないように一足毎にずっと踏ん張り続けるのしんどい。鎖場やはしごも。五色ヶ原側からだと上りになるのと、早朝で気温が低いので、あまり苦しむことなく上りきった。
午前6時半、出発から1時間半、ザラ峠から1時間で本日最初のピーク、獅子岳へ。
景色は見えないので、少し行動食を口にしたらすぐに出発。雨に降られる前に。
2つ目のピークは鬼岳、見えません。ここはライチョウが良くいるそうなのですが、気配は無し。午前7時15分通過。
大きな岩がゴツゴツの道に差し掛かる。これも火山活動で出来た岩々ですよね。こんなの飛んできたら必ず死ぬ。三途の川の河原の石に違いない。
岩々の斜面を時には手も使いながら上る。3つ目で本日最後のピーク、龍王岳へ。午前8時、何も見えねぇ…!
雨の賑わい
この日歩いた稜線からはきっと素晴らしい立山の眺めとか、迫力のある立山カルデラの姿とか、眼下に広がる黒部ダムとか、抜けるような秋の遠い青空とか、いろんな景色が見えるはずだった。もやもやが全てを隠しているけれど、これも雄大な自然の姿。また来よう。
この辺りからレインウェアを着ないといけないほどの小雨が降り始め、そして出会うライチョウの群れ。そこかしこから鳴き声が聞こえる。3羽から最大7羽!合計で20羽以上に出会いました。雨なのと、もう珍しさが薄れてきたので写真も愛でタイムもパスして進む。なんて贅沢な時間。
そして室堂平が見えてきました。いつ見ても日本離れした美しさに惚れ惚れ。3週間ぶりです。
午前8時半、一の越山荘に到着。とりあえず寒いのでホットココアをいただく。ライチョウイラストのオリジナル紙コップが可愛いね。
ここで30分以上のんびりしながら様子を見るも、天気が回復しそうもない、風も強くなりむしろ悪化している…。体力は十分残っているのだけど。黒部ダムまで歩いて下りたいんですよね、と山荘の方と話すも「何も見えないよ。」、はい、仰る通りでございます。諦めて室堂へ下ることに。
小雨だった雨が途中でジャンジャン降りに…レインウェアの下を履いていなかったのにこれは履かないとまずい!という程。それでもこれから雄山に向かうという登山者さんたちが大勢。こんな日でも行くの…何しに行くの…何も見えないよ…。
早歩きで室堂を目指す。今初めてライチョウに出会ったとおぼしき登山者さんから「ライチョウいるよ!」と教えてもらいましたが、私はもうたくさん見てきました!
傾斜が緩くなったところで雨傘を差しながら進む。気温も低く風に吹かれるので体感はとても寒い。もう名残惜しさも無く、早く屋根の下に行きたい一心。
午前10時10分、トロリーバスに乗り扇沢へ。ロープウェイ、ケーブルカー、電気バスと乗り継いでいく。標高が下がるにつれだんだん暖かくなってくる。室堂2,450mでは冷え切っていた体も、黒部ダム1,550mまで下りてきたらだいぶ温かさが戻って来た。
上は雨だったのに、黒部ダムでは降っていない…。もしや頑張って下ってこれたんじゃ…。これって山あるある。下りたら晴れてるとかね。でもそれは結果論。今年は山岳遭難事故が過去最多だそうで、自分はやらないように、という気持ちが。単独行だし、慎重に越したことはない。山で死ぬのはいろいろ大変ですからね。
道中、微妙な待ち時間が各所で発生。黒部ダムのレストハウスで休み、扇沢駅では路線バス待ちの間に食事を取る。信濃大町駅では電車の乗り継ぎに1時間待ち…。と、家に帰りついたのはなんと夜の20時。移動で10時間て。山登りよりも乗り物移動の方が疲れる。絶対そうだよね?!
最後は残念ながら黒部ダムまでの道は歩けませんでしたが、またの機会に。無事で帰ってくるからこそ、また挑戦できるからね。
今回は秋山の楽しさを満喫した山旅でした。涼しくてバテない、ガスが湧かない、夕立もない。体力は余るほどで、道中のんびり景色を楽しんだりモグモグしたり、余裕十分。もうこれからは秋山に全賭けしようかなと思う程。8月は山は諦めて、9月後半にはずっと山とかね。
絶景と解脱の思い出が深く、私の人生をバージョンアップさせてくれる体験でした。山旅の後は本当に自然のエネルギーに満ち溢れて、もちろん肉体的な疲労はあるのだけど、それ以上のものがある。そんな私で挑む鍼灸施術はすごいはず。
この山旅から帰った数日後、ふっと不思議な感覚が。日差しが強い日に帽子を被って出掛けた時、その帽子を被ったという行為が自分を大切にしているな、と感じて、優しい幸せな気持ちに。これがもしや悟りなのか。次の日、音楽を聴きながら電車に乗っていた時、好きな音楽聴いて好きな服を着て、なんだ私って自由だ、と感じて、どこかへ飛んでいけそうな解放感が胸に広がる。これがもしや悟りなのか。
私は、豊かな人生を送るため、良い仕事をするため、山に行く。悟った私に会いに来てください。
私の人生という山旅は次へ続く!
信濃大町。お世話になっています。