旅の2日目。1日目のブログはこちら⇒山梨 身延【七面山敬慎院】修行の禊登山 Day1 2023.12.3
この日は敬慎院から静岡・梅ヶ島温泉までを目指す、コースタイム6時間半の一日。朝のお勤めに参加した後、御来光を拝み、七面山から八紘嶺までの倒木祭りを乗り越え、山奥の温泉、思い出の地に降り立つ。引き続き禊まくりの一日。12/4(月)
◇ 旅の行程 ◇ 0 富士駅前 前泊 1 富士 ⇒(電車)⇒ 身延 ⇒(路線バス)⇒ 久遠寺 ⇒ (ロープウェイ) ⇒ 身延山 ⇒ 敬慎院 2 敬慎院 ⇒ 七面山 ⇒ 希望峰 ⇒ 八紘嶺 ⇒ 梅ヶ島温泉 ⇒ 安部の大滝往復
世界を照らす光
湯たんぽ布団でゆっくり温かく就寝し、朝は5時半起床。朝勤は6時開始、日出は6時半。
宿の中も氷点下。外はマイナス9℃。身支度を済ませ、本堂で朝勤。澄み切った空気の中、お経と鐘、木魚が響き渡る。
途中で辞退させていただき、御来光を拝みに随身門の広場へ。朝は風が無く、止まっていても耐えられる寒さ。
じっと静けさの中、御来光を待つ。一瞬が永遠に感じられる、でも刻々と色彩を変えていく、澄み切った純粋な世界。世界各地に絶景はあれど、どこに出向いて行かなくたって日本には、ここには、唯一無二の絶景がある。今この瞬間、この景色を目にしている私は、まさに奇跡真っ只中。心頭滅却。
写真を仲間たちに送ったところ、「お正月の元旦のような景色をいつも見ているんだね。」と。確かに山ガールはおめでたい人種だ。
が!地球は毎日こんな奇跡の瞬間に溢れてるのだ。命ある限り、私は見たいし感じたい。そのために生きていたい。
この色彩は本当に一瞬で、その後は明るい日中が始まる。本堂に戻り、朝勤の続きに参加。帰りの安全を祈願していただき、なんて素晴らしい朝時間。そして朝食をいただく。質素だからこそ身が引き締まる思い。もしここでずっと修行していたらどんな私になれるのだろうか。
午前7時半すぎ、出発。お坊さんたちが総出で見送ってくれる。出迎えてくれた時と同じように、扉をいっぱいに開け放って。寒くなってしまうだろうに、私たち登山者も、ここに訪れる人たちはみな、同じ修行者、現世を精一杯生きる同志、と思って下さっているのでしょうか。心遣いに感謝。
昨日は気付かなかったけれど、随身門には「摩尼珠嶺」の文字、これは七面大明神さまのことだそうです。
まずは七面山に向けて。鹿たちがお出迎え。
生きる地球
穏やかな森を10分ほど歩いたところで、七面山の東側の斜面が見えてくる。ナナイタガレという大崩落地。数百年前の地震で崩れたとされ、今でも崩壊が続いているので、耳をすませばパラパラと音がする。淵に立って撮影したけれど、なかなか怖い。転落注意。
緩やかに登り続け、ナナイタガレの上の方に出た。
歩き始めて40分ほどで七面山山頂1,989mへ。樹林帯に囲まれ展望はなし。この先の稜線もほぼ展望は無い樹林帯の中だ。足元にはほんのり雪や霜が。アイゼンはまだ不要。冬山一歩手前。
七面山から30分ほど、森を歩き続けて希望峰1,980mに到着。西側の展望が開ける。雪化粧した南アルプスの山々。この夏登った聖岳や悪沢岳も。
祭りのとき
小休憩をして気合を入れなおす。この先は人の往来の少ない登山道。平成30年の台風で倒木が酷く、道迷いの危険があるとのこと。加えて、往来が少ないということは、野生動物に遭遇する確率も上がるということ。行くかどうかすごく迷ったのだけど、静岡の安部奥に抜けるこのルートをどうしても歩いてみたくて、挑戦することに。
倒木についてはヤマレコやブログ、町発信の情報を検索し、登山道の状況を確認。数年前はかなりルートファインディングに苦労した様子だったが、数週間前はそこまで苦労した記録は無い。ただしほふく前進した、と書いてあったので、引っ掛かりやすい装備は全てザックにしまった。
熊については敬慎院に電話で確認した時には、目撃情報があるとのことだったので、熊鈴を付けて。
倒木と熊にドキドキしながら進む。絶対生きて帰るぞ、明日を迎えるぞ、と心に決めて。この生死を意識するというのは登山ならではだと思う。他のアクティビティには無い、一つの魅力。本当は日常にだって死はすぐそこにあるのだけれど、平和な日本ではほとんど意識する瞬間が無い。
「今この瞬間を生きる」ことに集中しながらも、そんな今も生きている限り連続していく。せっかく生きるなら有意義に楽しく生きたい。望む未来に行きたい。だからこそ、人生の目的とか未来の自分とか、考えながら歩くんだけどね。
だんだんと倒木が増えてくる。何十年何百年とそこにあったものが、たった一度の台風でこんなになってしまうなんて。自然の圧倒的パワーよ。
登山道がまるっとつぶれているところは、完璧に迂回路が出来上がっていた。数メートル間隔でピンクテープ(目印)が。なんと一度もほふく前進をするどころか、迷う瞬間も無かった。あれだけビビっていたのに。それはそれでちょっと残念。
倒木祭りは1時間ちょっとで終了。誰もいない山を独り占め。この日は誰一人すれ違わなかった。
アップダウンを繰り返しながら、最後のピーク、八紘嶺1,918mへ。午後0時。ここは山梨と静岡の県境。爽やかな風が吹き抜け、安部奥の山々が顔を出す。ここから先は下るだけ。祭りを無事に終えた安堵と、山旅が終わる寂しさ。名残惜しさがありつつも、じっと止まっていると体が冷えてくる。気持ちを切り替え、温泉目指してレッツ下山。
祭りのあと
ここからは下り。安倍川、その先には駿河湾。安部奥の稜線を眺め、いつ来ようかなと思いを馳せる。
急な下り、砂利のキツイ斜面トラバースが連続し地味に辛い。写真じゃ分からないけど、靴幅しかないような細いトラバース道、滑り落ちそう。
間伐展示林というお行儀の良い感じの森を越えて。
本日のゴール、梅ヶ島温泉へ。到着午後2時。
学生時代に静岡に住んでいた頃、実はここにある安部の大滝まで2度ほどツーリング&ハイキングしに来ていました。緑の中をバイクで風を切り、息を切らしながらマイナスイオンのシャワーを浴びた、あの日の思い出。
時間があったら絶対安部の大滝に行きたい!と思っていたので、宿に荷物を置いた後、お散歩しに。
あの頃は歩き慣れていないのでたった往復1時間半がめちゃくちゃ辛かった思い出なのだけど、今は6時間半の山歩きの後でも余裕で行って帰って来れました。道はほとんど覚えていなかったけど、滝は、そうそうこんな感じだった!20年前もここで私を迎えてくれた。また来れて良かった。
泊まったのは小さな民宿で、平日ということもあり、お客は私一人。美味しいご飯とビール。前日が質素だっただけに、なおさら豪華に感じる。そして温かい温泉、優しいおかみさん。こういう交流も山旅の心温まる幸せな奇跡の瞬間。お世話になりました。
翌日は2時間バスに揺られて静岡駅へ。のんびり帰りましたとさ。
私の禊登山はこれにて終了。たぶん生まれ変わって帰ってきました。いつでも何度でも生まれ変わって今を生きる。いつでもやり直そう。いつでも新鮮でいよう。自由に私を生きるのだ。
次の山旅へ続く!