秋の紅葉登山
今年は「11年に一度の紅葉の当たり年」とテレビで言っていた。その一方で雨の日が多い。晴れる日ももちろんあるが、周期的に週末は雨、週中は晴れても長く持たない。秋の縦走登山は3つ計画していたが、ほとんどの日が雨予報で全てバツ。今回は雨飾山に行く予定だったが、日本海側のお天気が悪く、泣く泣くキャンセル。しかし太平洋側は良いようだ。自然の力はすごいもので、秋の訪れにより日が短くなってきて気温が下がってくると、やる気もだんだんとしぼんでくる。当然、代替登山で遠くまでは行く気になれず、近場で思いついたのが今回の計画。東京の山奥を1泊2日で巡る山旅。10/27(月)-28(火)
◇ 旅の行程 ◇
1 奥多摩駅 ⇒(路線バス)⇒ 親川 ⇒ 丹波天平 ⇒ サヲラ峠 ⇒ 三条の湯
2 三条の湯 ⇒ 雲取山 ⇒ 七ツ石山 ⇒ 鷹ノ巣山 ⇒ 六ツ石山 ⇒ 奥多摩駅

丹波天平
1日目。10:15奥多摩駅発のバスに乗り、11時前に登山口の親川バス停へ。紅葉の名所だという広葉樹の広い尾根、丹波天平を経由し、三条の湯までを歩く、標高差1,000m、コースタイム5時間の一日。暗くなる前に辿り着きたい。
登山口の「熊出没注意!」の看板にビビりながらも、熊鈴をリンリン鳴らしながら歩を進める。始めは植林の杉林のゆるめの斜面を上り、次第にきつい斜面のほそーいトラバース道へ。足場が斜めになっていて滑り落ちるのではと思うような箇所も多数。なかなかハードな道が続く。

しばらくすると石垣のある廃屋が。かつて村があった痕跡が今もあるが、こんな山奥でどうやって生活していたのだろう。昔の人はたくましい。飛龍山などの登山ルートになってはいるが、ここを通る人は少ないのか、途中で10名ほどの団体さんを追い抜くもそれ以外は誰ともすれ違わない静かな道。私好み。


1時間少し登り上げると、広めの尾根へ。ここが丹波天平、標高1,400m前後に広がる広葉樹の美しい尾根道だ。ルンルンで走り抜けたいが、なかなかの斜面を必死に登ってきたのでそんな元気はなく、静かに歩くのみ。
大きな葉っぱ、小さな葉っぱ、肉厚な葉っぱ、実を落とすもの、背の高さ、枝の広がり方など、均一感がなくて温かみのある広葉樹の森。豊かな感じがして好き。

紅葉の名所らしいが、その時期にはまだ早く、所々に見える黄色い葉っぱは色鮮やか。渋いオレンジや赤になるのはあと半月くらい先だろうか。落ち葉を踏む音を楽しみ、足元に転がる無数の栗のイガイガを眺め(そういえば中身の栗が何もなかった…動物が食べてる?)、木々の間から漏れる日の光を浴びながら空気をたくさん吸い込み、ゆるやかな時間の流れのように急ぐことなく歩いていくと、あっという間に広葉樹ゾーンを抜け、唐松ゾーンへ。

針葉樹の森は凛として均一感があり、良い匂いがするからこちらも好き。(だけどスギ花粉だけは減ってくれないか…)
もうお花もほとんど咲いていなかったけれど、唯一トリカブトが数株だけ唐松林の中にいました。

ゆるやかにアップダウンのある尾根道を進んで行くと、サヲラ峠に到着。時刻はちょうど13時。飛龍山へと向かう道と分岐し、三条の湯方面へ。

ここからは尾根の右側をずっとトラバースしていく。最初の親川から丹波天平までの道と同じく、きつい斜面に細く険しい道、そして崩落地も多々。通行止めにはなっていないが、気を抜いていても歩けるような道ではなく(どこでも気を抜くのはダメだが)、慎重に歩を進める。



三条の湯
いくつもの尾根と谷を越えた先に見えてきた三条の湯、標高1,103m。14時半到着。いつか行ってみたいなと思っていた温泉小屋だ。最短ルートはお祭りバス停から林道を辿るルートで、コースタイムは3時間強。そちらで来たハイカーさんがほとんどだった。私は最後の到着。皆大部屋で、私を含めて6人が宿泊していた。

切り絵作家後藤郁子さんデザインの手拭いがとーっても可愛かったので要チェック。山小屋巡りしているといつの間にか手拭いが無限増殖する呪いにかかっているので要注意。

歩いて汗をかいてきたものの、標高が高いのでじっとしているとすぐに寒くなってくる。着替えと手拭いを抱え、15時からの女性タイムに温泉へ。男女入れ替え制で、奇数の時間帯は女性、偶数の時間帯は男性。大風呂と小風呂があり、この日は小風呂のみでした。



湧き出しているのは約10℃の単純硫黄冷鉱泉で、薪で沸かしてくれている。入った時少しぬるいなと思ったものの、じっくり浸かっていると汗がじんわり出てきて、体の芯から足先までポカポカに温まった。排水は直接沢に流れるため、石鹸類は禁止。

ビールはご持参。荒木飛呂彦先生描き下ろしデザイン缶で乾杯。

夕食タイム。副菜がいくつもある栄養満点ワンプレート。どれも美味しかったけれど、スープがすごく美味しかった。

他のハイカーさんたちと話しをしながら和やかな時間が流れる。女性のお一人、なんと北アルプスで滑落してヘリで運ばれた経験があるそう。大怪我だったが幸い後遺症などはなく山歩きは復活。しかしそれ以降、家族から「危険なところは禁止!」と言われ、キレットと名の付くところなどは避けていて、もう二度と行けないとのこと。生きて帰ったのが何よりだけれど、これからも好きなところや行きたいところに無制限で行き続けるためには、一度の失敗さえ許されないのか…まぁ確かにそうだよな…。と私も気が引き締まったのでした。

ここではカメムシが大量発生。お部屋にもたくさんいました。頼りになる男子がティッシュでつまんで外へポイポイポイ!してくれましたが、それでも何匹かとは一緒に寝ることに。もう仕方ないと諦めた。自然好きとかいいながら虫が苦手な山ガールは私のことです。
雲取山
2日目、東京都最高峰の雲取山に登り、奥多摩駅へと続く石尾根を下る標高差2,500m、コースタイム11時間の一日。長いので下りは走る予定で、暗くなる前に終わりたい。

午前6時、明るくなってから出発。ここからもトラバース道が多いと聞いていたが、前日ほど傾斜はきつくなく歩きやすい道が続く。ひたすらに登り、たまに下り。鹿が横切り走り去る。
標高が上がると葉っぱの色付きが良い感じに。前日よりも日差しが強く、明るい日に照らされてのびのびと木々が揺れる。


美しいがキツイ斜面を登り切り2時間弱、三条ダルミへ。ここからの眺めが最高でした。


絶景を前にしばし休憩、もぐもぐタイムを繰り広げる。曇り予報だったのに、来てみたら超快晴。サングラス置いてこようかなと思うくらいだったのに。雲取山は今回3回目、前2回も快晴。どうやら相性が良い山のよう。
ここから尾根に乗り、午前8時半、雲取山へ。

東京都最高峰、東京都・埼玉県・山梨県の境界にある標高2,017mの山。日本百名山の一つ。2017年(2017mだから登りに行こう!と)、2024年、2025年と来ました。前2回は一番メジャーな鴨沢ルートから、今回は三条の湯から、そして石尾根へ。新たな景色の発掘です。
20分ほど山頂時間を楽しみ、後ろ髪を引かれながらも、次なる絶景の場へと向かう。
石尾根
山頂を後にし、五十人平野営場に着くと、綺麗なトイレが!

昨年は建設中だった施設、立派に出来上がっていました。この道中、トイレは寄り道になるけれど七ツ石小屋まで行こうと思っていたので、ラッキー。感謝感謝です。
石尾根は雲取山から奥多摩駅まで続く長い尾根で、標高も1,700m付近が長く続き眺望が良いと評判。七ツ石山までは鴨沢ルートと重なり、よく整備された道を景色を楽しみながら安心して歩く。

どこからでも見えるこの富士山の景色、だいたい同じなのに何度も写真に収めてしまう。

予想に反して素晴らしい天気だったので、尾根に出てからはこんなほっかむりスタイルに。シミが気になるお年頃。午前10時前、七ツ石山へ。

ここから鴨沢ルートと道を分け、鷹ノ巣山方面へ。何という美尾根!

山頂を通る道と巻きのトラバース道と2本あり、初めてなので山頂を拾って歩くことにする。標高1,700m級の山々を繋いでいる石尾根、紅葉が進んでいてとても美しい。


山頂の道を通っているからか、本当に誰も来ていないのか、誰一人ともすれ違うことなく、この絶景をひとり占め。地味にアップダウンがキツイけれど、ニヤニヤしていればなんのその。



巻きトラバース道の景色がどんなだったのか気になりますが、山頂の道が美しかったので大満足。よくやった。


午前11時半、鷹ノ巣山へ。広く絶景の山頂、お弁当を広げて食べるのにちょうど良い休憩スポット。




ここからは少しずつ標高を下げながら進んで行く。



最後の展望地は、六ツ石山、標高1,478m。12時半、ご飯を食べ靴紐を結び直し、ラストスパート。

この先は2つ山頂がありましたが、一つは標識が何もなかったので踏んだけれど写真は無し、もう一つは破線ルートだったのでパス。ひたすら下ります。途中からは杉の植林地帯に入り、まだ昼間だというのに薄暗く、絶対に道は合っているのに不安になりながら早足で駆け抜け、14時過ぎにはロードに到着。神社で無事を感謝する。

14時半過ぎ、奥多摩駅に帰還。お楽しみさまでした。

電車は2分前に行ったばかり!駅の更衣室を借り着替えを済ませ、次の電車までの時間で祝杯。VERTEREのクラフトビール。

そして電車を乗り継ぎ無事に帰りましたとさ。
あとがき
ようやく行けた秋の登山、近さ故に後回しにしていた旅先は、美しい景色の素晴らしい場所でした。今年の秋はこれが最初で最後。昨年、3週間の山週間を作った時に全て行けたのは奇跡だったのだなと思った。当たり前なんてないのだ。一度でも行けたことに感謝しよう。

今年は熊のニュースがとっても多い。家族にも周囲の人にも「熊は大丈夫なのか」と良く言われる。大丈夫なのかという言葉には、「出る山域じゃないのか・怖くないのか・遭ったらどうするんだ」などの意味が含まれていると思いますが、まず、直近で目撃多発とか被害が出たとかいう地域はやっぱり避けようかなと思います。でも、熊は普通にいる。ここ奥多摩にも、我らが神奈川丹沢にも。なので全面的に辞めようとは思わない。怖くないのかと言われると、遭ったことがないので分かりませんが、たぶん相当に怖いと予想します。遭ったらどうするのかと言われると、遭ったらその時はその時。自然で遊ばせてもらっている身、自然に身を任せます。たとえいつ私の体が終わりを迎えようとも、「我が人生に一片の悔いなし!」と思って生きているので、楽しい人生だったんだなと思っていただければ幸いです。
さて、次はどんな冒険と感動が待っているでしょうか。私の人生という山旅はまだまだ続きます!

