北アルプス後立山連峰縦走5日間【白馬三山・白馬大雪渓】日本三大雪渓と雲上のお花畑 Day5 2025.7.31

旅の5日目。4日目はこちら⇒北アルプス後立山連峰縦走5日間【唐松岳・不帰嶮・天狗】かえらずの日本三大キレットと天狗の園 Day4 2025.7.30

この日は白馬三山を縦走し、お花畑を堪能、白馬大雪渓を下り、猿倉登山口までを歩く、標高差720m(登り)2,200m(下り)、コースタイム7時間の一日。7/31(木)

◇ 旅の行程 ◇
0 新宿 ⇒(夜行バス)⇒ 信濃大町
1 信濃大町 ⇒(路線バス)⇒ 扇沢 ⇒ 大沢小屋 ⇒ 針ノ木雪渓 ⇒ 針ノ木小屋 = 蓮華岳
2 針ノ木小屋 ⇒ 針ノ木岳 ⇒ スバリ岳 ⇒ 赤沢岳 ⇒ 種池山荘 ⇒ 爺ヶ岳 ⇒ 冷池山荘
3 冷池小屋 ⇒ 鹿島槍ヶ岳 ⇒ 八峰キレット ⇒ 五竜岳 ⇒ 五竜山荘
4 五竜山荘 ⇒ 唐松岳 ⇒ 不帰嶮 ⇒ 天狗ノ頭 ⇒ 天狗山荘
5 天狗山荘 ⇒ 鑓ヶ岳 ⇒ 杓子岳 ⇒ 白馬岳 ⇒ 大雪渓 ⇒ 猿倉 ⇒(路線バス)⇒八方 
白馬三山

2日目3日目の反省を活かし、コースタイムで1時間先の鑓ヶ岳の山頂で日の出を見るために、午前3時50分頃に出発。まだ暗いが、道がはっきりしているので迷わない。少し明るくなってきた東の空と鑓ヶ岳。

シルエット鑓ヶ岳

天狗尾根、天狗山荘、奥のシルエットは五竜岳か。右奥には立山連峰。

振り返って天狗

歩きやすい良く整備された登山道で40分ほど、あっという間に鑓ヶ岳山頂に到着。標高2,903m。天狗山荘に泊まったであろう登山者さんたちのみで、皆で静かにその時を待つ。この日も晴れ予報なのだが、朝は雲が出ている。

杓子岳と白馬岳

見事な雲海と日の出。最後の一日が始まった。

おはよう世界
登頂!

一瞬で形を変えていく雲を眺めながら、二度とない奇跡の瞬間を目に焼き付ける。

残念ながら雲が流れてきてしまい、ミルキーな景色になってしまった。朝の一瞬だけだと信じて、歩き始める。鑓ヶ岳を下り杓子岳との鞍部に来た頃に雲が晴れ、また絶景が目の前に。

手前杓子岳、奥白馬岳

美しすぎて歩けません。

振り返って鑓ヶ岳

前日白馬岳の小屋に泊まったであろう登山者さんたちとすれ違い出す。天狗山荘までお散歩に行くという女性、「釜プリンを食べに行く」とのこと。確かにそんなメニューありましたね。名物だったんだぁ。美味しいものにはアンテナ立たない山ガール、それは私です。

鑓ヶ岳から40分で杓子岳、標高2,912m。白馬岳をバックに。

やったー

味の素に勤めているというお兄さんとこの山頂で一緒になり、アミノバイタルをいただく。山登りを楽しみながら布教活動をしているのだそう。なんて素晴らしい社員なんだ!

安心安全の味の素ブランド、点滴でも使われるほどのしっかりした品質のものだとか。私はその辺の安いアミノ酸を飲んでいました、すみません。お兄さんに敬意を表し、これからは味の素のアミノバイタルを購入したいと思います。

味の素さんありがとう

残す山頂は白馬岳のみ。行ってしまったら私の山旅が終わる。いや厳密には家に帰るまでが旅なのだけれど、そうじゃなくて、稜線にさよならする時が来てしまう。そう思うとなかなか進みたくなくてちょっと休憩がてら長居をする。とは言っても無事に帰らなければいけません。意を決して先へ。

起伏の少ない縦走路は最高に天国。一歩を味わいながら進む。この日も見守ってくれている立山連峰。私の気持ちに応えて毎日本気出してくれてありがとう。

立山連峰

白馬岳に近付くにつれてお花たちも本気出してくる。

高山植物の楽園

丸山から白馬岳を望む。

白馬岳

杓子岳と鑓ヶ岳を振り返る。

杓子岳、鑓ヶ岳

絶景の白馬三山、リベンジ完了。素晴らしい景色を見せてくれてありがとう。

大雪渓への分岐に荷物をデポし、白馬岳の山頂を目指します。今回お供してくれたアシタカとヤックル。時々話しかけてました。この絶景見えてるー?って。笑

アシタカとヤックル

身軽になってスイスイと山頂へ。午前7時、この旅最後のピークで最高地点に到達。白馬岳、標高2,932m。そうか、今回3,000mは一度も越えていなかったのね。白馬岳は3回目の登頂、アルプスで3度も登った山は他にあったかな?

登頂!

もう5日間も山の上にいるのにまだ名残惜しい絶景。帰りたくないぜ!

白馬岳から

白馬岳は大人気の山、山頂にはひっきりなしに登山者が往来する。まるで駅ような大きな山小屋があり、たくさんの登山者を受け入れてくれている。この絶景ならぜひ見たいよね。

しかしいつまでもこうしていられないのが人生というもの。私にはまた次の山旅が待っている。だから一旦さよならだ。

白馬山荘で長野県の山岳警備隊の方とすれ違う。私が空身なので、「どちらまでお散歩ですか?」と聞かれた。扇沢の針ノ木雪渓からスタートして今日で5日目、これから大雪渓を下山すると伝えた。北上の不帰嶮は怖かったがなんとか通過できました、と言うと「それだけにスリリングで楽しかったんじゃないですか」と言ってくれた。はい、とっても。お世話にならないようにこれからも安全に山を楽しみます!

雲上のお花畑

分岐にデポした荷物を回収し、いざ下山。まだ時間に余裕があるので、下り始めてすぐのお花畑を堪能しながら行きます。

白馬岳頂上宿舎
咲き乱れてる

20代の頃一時期スノーボードにハマっていて、ここ白馬には冬に良く来ていた。そこで目にしたポスターには白馬の夏の姿、高山植物のお花畑が。いつか見てみたいなぁと思った記憶がある。その頃は私が登山をするなんて思ってもみなかったけれど。今私は本物の景色の中に。

お花畑

高山という厳しい環境に力強く咲くお花たち。短い夏に一斉にいくつもの種類の花が咲き乱れて、緑のキャンバスに色とりどりの鮮やかな彩り。多様性と力強さ、儚さと可憐さと美しさ。この景色を眺めていたら「頭の中がお花畑」ってもしや最高の誉め言葉なんじゃ?!と思ったのでした。私も頭の中をお花畑にしたいわ。そう思うよね?!

頭の中お花畑は
最高の誉め言葉
間違いない
白馬大雪渓

お花畑天国ゾーンをゆっくり1時間かけて通過。その後高度を下げるにつれてなかなか傾斜がきつくなり、軽く足を滑らせる。登山中最も事故が起きやすいのは下山時、行程の残り4分の1のところと言われている。疲れてくること集中力が低下してくることからだが、もう気持ちは早く下りて着替えたい風呂に入りたいビールが飲みたい、と、山にいるのに心は下山完了後にワープしてしまうからだ。私も完全にそうなっていた。軽く転んだことで心をここに取り戻す。まだ終わっていないぞ。

杓子岳

この谷に残る雪渓を下っていく。日本三大雪渓の白馬大雪渓。数日前に落石事故があったばかりで、要注意。

大雪渓

雪渓までの夏道がなかなかの難所。ザレた急な斜面で何度も何度も滑りそうになり、ブレーキをかけながら進むので足も神経も疲れてくる。その上、朝一から登り始めたであろう登山者さんたちとすれ違い出すので、安全にも気を遣う。

入口に到着し、チェーンスパイクを装着。いざ進め。

進みます

一寸先に雪渓に入っていたお兄ちゃんが下りに苦戦中。どうやら4本爪か何かの軽アイゼンを持っているらしいがうまく装着できていないのか、全然歩けないご様子。大丈夫か、と声を掛けるも、お構いなく、という感じだったのでお先に。ご無事だったのだろうか。かと思えば、慣れている人なのか、ノーアイゼンですごいスピードでずんずん歩くおじさんも。

雪渓はガスの中、涼しい風が吹き抜ける。

点在する落石

谷合でこだまして、音が近くなのか遠くなのか良く分からないが、どこかからピキッ!ドドドドドドドドドッ!と、落石の音が。思わず近くにいた登山者さんと顔を見合わせ、やばいね早く通過しましょう、ご無事で、と言い合う。落ちてきたであろう石があちこちに点在する。あんな大きな石が直撃したらと思うだけで恐ろしい。慎重に、しかし素早くこの難所を通過しようと足が自然に急いでいく。

雪渓は上部と下部に分かれていて、間の夏道を少し歩き、下部雪渓へ。

進みます

下からは続々と登山者さんが。大人数の団体さんも。

下り

下るにつれ暑さが増す。一生懸命足を動かしているので汗だく。大雪渓、1時間で無事に通過完了。

完!
おつかれさん

雪渓から離れた後は緩やかに下る整備された道と、最後は林道。ここがキツカッタ…。暑いし、平坦だからほぼほぼコースタイム通りの長さ。全然進んでいない感覚…。猿倉はまだか、まだかまだか、まだかまだかまだか。走ってしまいたいけれど、登山靴だし荷物は重いから走れない。くぅ。仕方なくトボトボ歩いていると、鑓温泉への分岐が。よしもうすぐ。さぁ着いた。午前11時半、猿倉登山口に下山完了。

猿倉荘

ここ猿倉荘、少し前に放送していたテレビドラマ「マウンテンドクター」の山小屋として使われた場所。

マウンテンドクター

下界は暑い、暑すぎる…。熱中症になりそうだ。翌日から都会のアスファルト地獄の熱気の中に戻るのが非常に憂鬱だ。荷物の整理をしながら予約していた路線バスを待つ。同じくバスを待つ登山者さんたちとお互いの旅を振り返りながらおしゃべり。

時間通りに来たバスに乗り込み、八方バスターミナルで下車。すぐそばの温泉へ行き、5日分の汗と垢を洗い流す。コンビニでご飯を買い込み、高速バスと電車で無事に帰宅。

あとがき

前回前々回の南アルプス5日間と比べ楽だったのは、北アルプスの縦走は次の山までの標高差が大きくないこと。南は一つ一つの山が大きすぎて、一度下山してまた登り返すような感じで、これ縦走かな?と思えるような壮大な体力戦になるから。また、今回のルート上には難所が多く、コースタイムと比較して距離や標高差がそうでもなかったことと、おそらくランニング効果により体力が付いてきたから。暑かったしきつかったけれど、死闘という感じでは全くなかった。ゆっくり景色を堪能することを第一優先としないのならば、もっと速く行けそうな気がする。

そして今回はとてもとても最高のお天気に恵まれた山行となった。過去2回は連日晴れ予報で出発するも1、2日は雨予報に変わりしっかり降られる…という結果だったが、今回は終始晴れ、風もなく絶好の登山日和5日間。狙い通りとはいえ、こんなにも良いのは珍しい。全てのリベンジと願いを叶えることができた。我が人生に一片の悔いなし!

一歩一歩進み、顔を上げると、目に飛び込んで来るのはこの世の奇跡。絶景。それが毎瞬間。私が今生きていると思っているこの世はもしかして天国?と何度も、何度も何度も思う。不帰嶮に入ったから、もしかしてどこかの瞬間に私死んだかも?と思い、帰宅後母に「ねぇ私って生きてる?」と聞いた。冗談じゃなく本気で。荷物は重かったし体は疲れたし暑かったし足も痛かったし怖かったしお腹もすいたけれど、絶景の中でずっと私の体と心は軽く、フワフワとした浮遊感をまとっていた。

喜びも感動も、疲れも恐怖も、美味しいビールも味わえるこの世は、生死問わずたぶん天国。大自然に抱かれ、見守られながら、私の5日間の山旅が終わりました。ありがとうございました。

さて、次はどんな冒険と感動が待っているでしょうか。私の人生という山旅はまだまだ続きます!

今日もthanks🌟