北アルプス後立山連峰縦走5日間【鹿島槍ヶ岳・八峰キレット・五竜岳】日本三大キレットと菱紋の巨山 Day3 2025.7.29

旅の3日目。2日目はこちら⇒北アルプス後立山連峰縦走5日間【針ノ木岳・爺ヶ岳】立山連峰の大パノラマ絶景の稜線 Day2 2025.7.28

この日は鹿島槍ヶ岳に登り、八峰キレットを越え五竜岳に登り、五竜山荘までを歩く、標高差1,200m、コースタイム9時間半の一日。7/29(火)

◇ 旅の行程 ◇
0 新宿 ⇒(夜行バス)⇒ 信濃大町
1 信濃大町 ⇒(路線バス)⇒ 扇沢 ⇒ 大沢小屋 ⇒ 針ノ木雪渓 ⇒ 針ノ木小屋 = 蓮華岳
2 針ノ木小屋 ⇒ 針ノ木岳 ⇒ スバリ岳 ⇒ 赤沢岳 ⇒ 種池山荘 ⇒ 爺ヶ岳 ⇒ 冷池山荘
3 冷池小屋 ⇒ 鹿島槍ヶ岳 ⇒ 八峰キレット ⇒ 五竜岳 ⇒ 五竜山荘
4 五竜山荘 ⇒ 唐松岳 ⇒ 不帰嶮 ⇒ 天狗ノ頭 ⇒ 天狗山荘
5 天狗山荘 ⇒ 鑓ヶ岳 ⇒ 杓子岳 ⇒ 白馬岳 ⇒ 大雪渓 ⇒ 猿倉 ⇒(路線バス)⇒八方 
鹿島槍ヶ岳

午前4時、出発。緊張の一日が始まる。まずは鹿島槍ヶ岳の手前、布引山を目指す。

シルエット鹿島槍

美しい色。何度体験しても、何度も体験したいと思う瞬間。

明けていく

まだ眠る、前日歩いてきた山々たち。

爺ヶ岳、サーキット稜線

そして前日に学習したはずなのに、やはり山頂に着く10分手前で世界が目覚める。4時40分、日の出。

おはよう世界

布引山山頂、鹿島槍ヶ岳の堂々たる姿が眼前に。

登頂!

小屋で同室だった女性と写真を撮り合う。この素晴らしい日を喜び合い、ひとしきり撮影した後は、鹿島槍ヶ岳へ向かって歩き出す。南峰と北峰からなる双耳峰の美しい山容。遠くから見ると猫耳のようでキュートなのだ。

女性に「旅の半分まで来たね」と言われ、あぁもうそんなに来てしまったのかと。5日間、長いようで、楽しい時間はあっという間。

ゆるやかに登り上げ、山頂手前で振り返って超絶景。

歩いてきた稜線

布引山から40分で山頂へ。鹿島槍ヶ岳、標高2,889m。こちらは南峰。日本百名山の一つ。私は二度目の登頂ですが、初めて見る展望に大感動(前回は雲の中だった)。

やったー

360度の大展望。扇沢から柏原新道を通ってくれば危険個所はほぼ無いので、人気の百名山。こんな絶景見られるなら皆来たいよなぁ。前日冷池山荘に泊まったであろう登山者さんたちで賑わう。しばしの天国ボーナスタイムを満喫。

八峰キレット

ほとんどの人が南峰で折り返して帰る中、北峰を目指す。両峰をつなぐ間は吊尾根と呼ばれ、ここからスリリングな時間が始まる。右が北峰、左に向かう稜線が八峰キレット!

吊尾根

ポールをしまい、ヘルメットを装着。なかなかの急斜面を慎重に下り、北峰と八峰キレットの分岐へ。6年前は雲の中だったのでパスした北峰にも登っておく。標高2,842m。ここからこの日の核心部、八峰キレットの全貌が…。

北峰

鞍部に赤い屋根のキレット小屋。まあまあ近く見えるのに、あそこまでのコースタイムは2時間。厳しさが窺えます。

八峰キレット

日本三大キレットのうちの一つ、八峰キレット。鹿島槍ヶ岳と五竜岳を繋ぐ区間で、切り立った岩壁に作られた難所の登山道だ。

分岐に戻り、いざ行かん。斜面に作られた厳しい道を下っていく。核心部の鎖場もまぁ怖いのだけれど、足を滑らせたら谷底へと転げ落ちてしまいそうな斜面に作られた道がずっと続くのが怖い。そう感じるということは、私鎖場とかは不得意ではないのかも。

鎖場

一気に登山者は少なくなり、ワイワイした大人数のグループよりも私のようなソロや少人数のグループばかりに。怖いが、大人気の後立山連峰の中にあってこの静かな山歩きはご褒美タイム。恐怖と静寂、まさに山という空間。落ち着くわぁ。

梯子、鎖場

反り返ってるくらいに見える。

ぎゅいーん
梯子

とんでもないトラバース鎖場。

鎖場

そうこうしているうちに吊尾根の分岐から50分ほどでキレット小屋に着いてしまった。核心部があったようだが、どこか分からないくらいだった。やはり一度通ったことがあるからか、なんとなく思い出す感覚がある。そうそう、思ったよりは大丈夫だったのだよね。もしかしたらこの八峰キレットは北上ルートの方が楽なのかもしれない。

到着

6年前に宿泊したキレット小屋。6年前と同じ場所同じポーズで写真を撮る。今回はトイレを借り、休憩のみで通過。

ここで出会ったテントを担いだ20代くらいの青年、話しをすると、私と全く同じ日数で同じルートを逆行してきているとのこと。彼は南下で4日目、私は北上で3日目。話題は自然に、通過した難所へと進む。彼は前日通過、私は翌日通過予定の不帰嶮(かえらずのけん)だ。彼も私も初挑戦。「あそこの核心部、あっちからだと登りだったから行けたけど、こっちからだと下りで(超危険そうだけど)行けますか…?」と。行ったことないから分からないよ…呪いをかけないでおくれー!やっぱり南下で計画するべきだったか。まだ八峰キレットを通過しきってもいないのに、翌日の不帰嶮に心が震える。

青年よ、楽しい会話の時間をありがとう。写真を撮ってくれてありがとう。人生が交差する感動の瞬間を味わわせてくれてありがとう。君の無事と素晴らしい山旅を祈る。さよならだ。彼に別れを告げ、先へ。

キレット小屋

前方には岩々の峰々が連なる。

稜線
梯子
鎖場

だんだんとガスが上がってきて、幻想的な稜線の景色になる。目指す五竜岳は見えなくなってしまった。

稜線

キレット小屋から1時間半で、北尾根の頭、標高2,560m。相変わらず立山連峰は見守ってくれている。

北尾根の頭
梯子

ガスの切れ間から五竜岳が見えた。

奥のピークが五竜岳

もう足滑らせたら死ぬよ、という道の連続。

こわー

人が立っていると臨場感が出ますな。岩々の厳しい道です。

岩々

G5核心部。まあまあ危険に見えますが、鎖がしっかり付いているので大丈夫。

G5
通過
五竜岳

いよいよ五竜岳に登る、というところもなかなか危険度高め。ガレ場が続く。

鎖場
振り返って八峰キレット

五竜岳は、今朝通過した鹿島槍ヶ岳と並んでこの後立山連峰の主要峰の一つ。大きくどっしりとした男性的な山容で、山頂近くの岩場が菱紋のひとつである武田菱の形にみえることから、御菱岳(ごりょうだけ)を呼ばれたのが名前の由来とも。

大きな山頂が見えてきた。

あそこだ

北尾根の頭から2時間で五竜岳、標高2,814m。

やったー

八峰キレットを無事通過し、安堵。ガスでほとんど周囲は見えないものの、時刻はまだ12時。あとは1時間足らずで小屋に着いてしまうので、しばし山頂の雰囲気を楽しみながら30分以上過ごす。ほんの一瞬、剱立山が顔を出してくれて、周囲の登山者さんたちと喜び合う。

ビールが飲みたくなってきたところでやれやれと腰を上げて動き出す。山頂から小屋までもなかなかの道なことを覚えていたので、最後まで気を抜かずに。

下る
小屋が見えてきた
五竜山荘

13時過ぎ、五竜岳から40分ほどでこの日のゴール五竜山荘へ。休憩含めた行動時間はコースタイムとほぼ同じ9時間で完。

五竜山荘

ここも満員御礼大混雑。コンセントは各部屋にあり、満足に充電可。しかし水が無く、手を洗う水すら出ない。トイレが綺麗で立派な洗面台もあるものの、水が出ない…。宿泊者も煮沸消毒した水を500ml400円で購入しなければならない。ペットポトルは1本700円で、一人1本までだったような。しばらく雨が降っていないので深刻な水不足状態だ。

着替えを済ませ、いざ本日の祝杯を。

かんぱーい

武田菱を入れて撮ってくださいました。ありがとうございました。生ビール1200円。必要経費です。

小屋の前で他の登山者さんたちと談笑タイム。この日も15時頃になるとガスが晴れてきた。今から山頂に行きたいくらいだが、もうビールを飲んでしまったし大満足したので、雄大な山容に見とれながら午後のひと時を過ごす。

五竜岳

本当は五竜山荘で昼食を取ろうと考えていた(6年前はやっていた)のだが、今は提供していない、とのことで食いっぱぐれてしまい、ビールと持参した行動食のみで紛らわせた。なのでお腹はペコペコ、同室の女性たちも皆お腹が空いたといって、夕食の行列に並びに行く。美味しいカレー、完食です。水不足なので、お茶をお腹いっぱい飲んだ!

ごちそうさまでした

沈む夕日を眺めて、一日が終わる。

おやすみ世界

同室の女性たちは皆、前日に唐松岳頂上山荘に泊まり、この日この五竜山荘に到着というルートを歩いてきていた。五竜唐松間も牛首という難所がある。そこを越えてきた勇者たちだ。私がこの日八峰キレットを越えてきて、翌日は不帰嶮というと、もう名前からして怖い怖い怖い、歩いて良いところなの、信じられない、と話題に。すごいね、頑張ってね、という称賛と応援なのだともちろん頭では分かっているのだが、内心恐怖に怯えている私にとってはやはりこれも呪いー!

不帰嶮、本当に名前からして恐怖。かえらず、って、ねぇ。私は生きて帰って来られるのだろうか。死ぬのは構わないが、山で遭難すれば大変なことになるし、この旅で出会った人たちに「あの子死んじゃったんだ…やっぱりね」と思われたら恥ずかしい(死んでおいて恥ずかしいも何もないだろうが)。そんな思いを織り交ぜながら、緊張という分厚く重たい空気が私を包む。厚みは5cmくらい、重さは羽毛じゃない布団くらい。

同室の女性の一人、北アルプス登山のために山口県から一ヶ月間時間を作って来ていて、あちこちの山を登っているそう。私は一ヶ月あったら何しよう、一人トランスジャパンアルプスかな。それ良いな、2年後くらいに計画してみようかな。

夕焼けのグラデーションを眺めたり、お話ししたりして、消灯頃まで過ごした後、眠りにつく。

疲れはあまりなく怪我もないが、足の裏が痛くなってきた。果たして私は無事に生きて帰れるのか。どんな体験が待っているのか。Day4へ続く!⇒北アルプス後立山連峰縦走5日間【唐松岳・不帰嶮・天狗】かえらずの日本三大キレットと天狗の園 Day4 2025.7.30

今日もthanks🌟