旅の5日目。4日目はこちら⇒南アルプス北部大縦走5日間【蝙蝠岳・塩見岳】日本9位の高峰と美尾根へ Day4 2024.7.31
この日は本谷山2,658mや三伏山2,615mを越え、日本一高い峠の三伏峠2,580mでお花畑を鑑賞、鳥倉登山口1,790mに下山するコースタイム5時間の山旅最終日。8/1(木)
◇ 旅の行程 ◇
1 小淵沢 ⇒(登山タクシー)⇒ 尾白川渓谷 ⇒ 七丈小屋
2 七丈小屋 ⇒ 甲斐駒ヶ岳 ⇒ 摩利支天 ⇒ 仙水峠 ⇒ 北沢峠 ⇒ 小仙丈ヶ岳 ⇒ 仙丈小屋
3 仙丈小屋 ⇒ 仙丈ヶ岳 ⇒ 大仙丈ヶ岳 ⇒ 三峰岳 ⇒ 熊ノ平小屋
4 熊ノ平小屋 ⇒ 北荒川岳 ⇒ 北俣岳分岐 ⇒ 蝙蝠岳往復 ⇒ 北俣岳分岐 ⇒ 塩見岳 ⇒ 塩見小屋
5 塩見小屋 ⇒ 三伏峠 ⇒ 鳥倉登山口 ⇒(登山バス)⇒ 伊那大島
帰りたくなったよ
山小屋では頭も体も洗えないので、顔はメイク落としシート、頭はドライシャンプー、体はボディシートでケアをするのですが、4泊目ともなると何も役に立たず。顔は日焼けと角質でボロボロになってくるし、体や髪や頭皮はベタベタ(男性なら水浴びすれば少しは良いのでしょうが、私はそうもいかず。いっそのこと坊主頭にでもしようか)。これらが不快過ぎて気になって眠れない。風呂に入らないということはこういうことです。
塩見小屋の寝具は寝袋、その下は畳なのですが、腰の骨が当たる私には厚みが足りなく、↑の不快さも相まって、ほとんど眠れず。今思えばザックの背中に入っているウレタンマットを腰に敷けば良かったとは思うものの、すっかり忘れていた。
この日は鳥倉登山口午前9時15分発の登山バスに乗り帰路へ着く予定、間に合うように午前3時起床、食堂で身支度。
小屋番の奥さまへお礼を言ってから、午前4時出発。山頂かどこかで日の出を狙うのか、出発されていった方も。
下り始め、樹林帯へ。下り基調とはいえ、いくつかのピークを越えていく。
立ち枯れの木々の間から一日の始まりが見える。辺りは雲の中だが、どんな日の出の瞬間だったのだろう。
午前5時、一つ目のピーク、本谷山、標高2,658m。行動食をモグモグしながら、居合わせた登山者さんとお話しをする。
西側の展望が良いというスポットののぞき岩、雲の中です。
神の後光
午前6時、二つ目にして最後のピーク、三伏山へ。標高2,615mながら360度の大展望。
次第に雲が晴れていき、景色が見えてきた。歩いてきた塩見岳や仙丈ヶ岳、中アも北アも。最後のお別れだ。
そしてうっすらブロッケン現象!この現象は雲があればこそ。自然現象はいつだって奇跡。
とても良い景色なので、多くの登山者さんたちが滞留。予定よりも早いペースで下ってきているので私もしばしゆっくりする。話の様子からベテランなおじさまに「この先何か見どころある?」とお聞きしてみたところ、三伏峠の分岐を赤石岳方面に5分ほど行ったところにお花畑があるからぜひ見に行くと良いよ、と。ちょっと寄り道決定。
神秘的な朝の樹林帯を抜けると、突然目の前に広がる楽園のような場所が。
鹿などの野生動物の食害を防ぐための防護柵が設置してある。柵の中には色とりどりの高山植物たちが。
お花畑の先は崩落した斜面なのだけれど、向こう側の縁で何やら虫取り網のようなものを振り回している方が。どんどん奥側へ行ってしまわれたのでお話は聞けませんでしたが、虫の調査でもしていたのでしょうか。
最高峠越え
楽園を堪能、寄り道を終了し、下山再開。
ここ三伏峠は、「日本一高い(と言われる)峠」だそうで、標高は2,580m。長野県下伊那郡大鹿村と静岡県静岡市葵区の境界にある。日本三大峠とも。峠とはいえ、静岡県側の道は荒廃が進みほとんど残っていないとのこと。これが「(と言われる)」という弱気な表記の所以?
三伏峠小屋で水を補給したかったものの、まぁ持っているもので足りそうなのと、どこで汲ませて貰えるか分からなかったので、スルー。
午前7時、鳥倉登山口へ向けて下山開始。コースタイムはここから2時間15分、バスは午前9時15分。巻いてきているのでたぶん大丈夫。
なかなかスリリングな場所もありつつ、徐々に高度を下げていく。
鳥倉登山口へと下山中、この日が旅の始まりのたくさんの登山者さんとすれ違うのですが、やはり山ハイお姉さまと同じ行程の山ハイお兄さまもいました。私が黒戸尾根から登ったと言ったら、「早月尾根行けるね」と言われ、ぬ?早月尾根とな?日本三大急登の一つ、剱岳へと延びる早月尾根。剱岳は一度もうこれ以上ないという程の超晴天の中登っているので、ノーマークだった場所。来年は早月尾根に行こう。そこから仙人池方面へ縦走かな。新たな計画が出来てしまった。
そして爽やかなイケメン君からの第一声は、「今日何日目ですか?」って、ぬ?私ボロボロに見えた?それともにおうのかしら…きゃーΣ(゚д゚lll)?という詮索はさておき、彼はこれから荒川岳方面へ行き、光岳へと向かうそう。テントで2泊か3泊。私も今度は三伏峠からそちらへ行ってみたい。
水場があったので水筒に汲んでみたものの、よく見てみるとあまり綺麗ではない…綺麗な水がちょっと残っていたところに汲んだので、その分まで無駄にしてしまった。ガーン。
全ては借り物
楽しみで仕方がなかった、歩いている間中ドキドキわくわくして、体は辛くて苦しくて、胸がぎゅっと熱くなって、最高に私が私だった5日間の旅が終わる。長いような短いような、もう限界のようなまだまだいけるような。
ふと、一緒に歩いてくれているこの体に感謝の気持ちが。欲を言えばきりがない、もっと世界的アスリート並みの肉体が欲しかったし、もっと美人だったらとか、もっと脚が細く長かったらとか。でも今、私はこの体でちゃんと私の命を生きている。アスリートのようなことは出来なくても、太くて短いが脚は問題なく動くし、美人ではないが目や耳や鼻や口や肌でこの世界を感じている。この世の全ては借り物、と仏の教えにもあるが、本当にその通りだ。こんなスペシャルな経験をさせてくれている現世の体に、大いなる感謝を。
そして肉体は滅んだとしても、魂はきっと忘れない。この地球で美しい山の景色を見たことを、夢中になって歩いたことを、私は私の命を生きたことを。
午前8時半、標高1,790mの鳥倉登山口へ。お疲れさまでした。
登山口では海外の方も。写真を撮って、と言われて、もちろん撮って差し上げました。数日前に賜った「Have a good trip!」を言ったような言わなかったような。ジャパニーズ山ガールなので許して。
午前9時15分、登山バスへ乗車。1時間45分ほどかけて、JR伊那大島駅へ向かいます。定員は30名ほどでしょうか、10名ほどを乗せて出発です。
走り始めてすぐ、バスの車窓からアサギマダラ(長距離移動するアゲハ蝶)を見付けて感動。
眠かったが、もしかしたらもう二度と訪れないかもしれない場所、車窓からずっと景色を眺める。
大鹿村は、リニアの工事をしているようで、道中たくさんの工事現場があり、数えきれないほどの大型トラックが行き交っていた。大自然を目にしてきた後で、自然に手を加える人間の営みを見ると、胸が痛む。リニアって本当に要るの?
ただし、私たちが経済社会の中にいて、その恩恵を十分に受けて生きていることも自覚している。こんな風に生活に追われずに自由に遊ぶ時間が取れることこそが、豊かな証拠だから。
私は私の信念にのっとり、自然を大切にした生き方をしていこう。
伊那大島駅、何かの漫画に出てきそうな山と青空の背景。標高は519m、山から下りてきて平地の暑さにグッタリやられる。
ここでは1時間の電車待ち。駅の周辺には商店や飲食店、入浴施設などは何もなく、少し離れた松川インターの近くには入浴施設がある。松川インターまでバスで行き、お風呂に入ってから高速バスで帰るという選択肢もあったものの、一刻も早く帰ることを選択、岡谷まで鈍行電車に乗り、そこからはあずさで帰る計画。
駅員のおじさまが優しく、写真を撮ってくれただけでなく、美味しそうな桃を1玉くれた。お土産的なものを買う場所が全く無かったので、ありがたく家に持ち帰り家族といただきました。
駅のトイレを借りて汗まみれの服を着替えた後、電車に乗り込む。途中の駒ヶ根駅からは、中央アルプスに登ってきたであろう登山者さんが目の前に。どこに行ってきたの?どんな体験があった?とお話しをしてみたい気持ちを堪え、一人山旅の余韻に浸る。
電車を乗り継ぎ、自宅に帰りついたのは17時半。移動時間8時間。どこぞの外国よりも遠い場所、それは登山口。
荷物を解き、大量の汚れ物を洗濯し、頭と顔と体をゴシゴシゴシゴシ洗い、一皮も二皮も剥けた気分。部屋着に身を包みベッドに飛び込む。私の夏山大冒険旅が終わった。
昨年は8月後半に実行した5日間の山旅。以前に比べて夏山の条件が良くなくなってきていると感じているので(暑さ、ガス、夕立や雷など)、今年は梅雨明けの時期を狙って。7月末は8月よりは良かったと思う。もう8月の夏山登山は引退です。
次は9月の秋山登山。北アルプスや中央アルプス、八ヶ岳、朝日連峰などを計画中。私の人生という山旅はまだまだ続きます。次の山旅へ続く!