【初めての海外レース】Tarawera Ultra-Trail by UTMB 2026|エピローグ

日常へ、そして次の章へ

成田空港に着いた瞬間、時間は一気に速度を取り戻した。秒刻みで動いていく空気の中で、「日本に帰ってきた」ことを実感する。

バタバタと電車に飛び乗り、気づけばもう、いつもの日常の中だった。

足の痛みはすぐには消えず、身体は「再生」という新しい冒険に入っていく。レースは終わっても、私の中ではまだ、別のかたちの旅が続いていた。

何度も振り返っては、涙があふれる。もはや言葉にならない体験を言葉という器に落とし込んでいくこの時間は、もう一つのロングレース、 “この変容の旅を書く” という挑戦でもあった。

ロトルアで泊まったバックパッカーズでは、最後に二重請求というトラブルも。クレジットカードの明細に並ぶ2件の請求。1ヶ月待っても訂正はなく、問い合わせると「今直しました!」とレシート画像が送られてきた。…本当に、最初から最後までトラブル満載。それでも、滞在中に受け取った優しさを思うと、何も言えない。なんだかんだ、ありがとう。

気づけば、あれから2ヶ月以上が過ぎていた。お土産は配り終え、クレジットカードの支払いも完了。負傷した爪の下からは新しい爪が育ち、役目を終えた古い爪は静かに剥がれ落ちた。

書くという挑戦も、もうすぐ終わる。

今でも思い出せばボロボロ涙がこぼれるけれど、少しずつ、旅の余韻は薄れていくのだろう。

それでも。

あの日、あの時、私は確かにそこにいた。

頬を打つ冷たい雨。泥の重さ。足の痛み。セミの声。深い緑の気配。温泉の匂いと温もり。湖畔の静けさ。

灰色の空の重さも、青空の広がりも、こぼれ落ちそうな星も。

あの場所で感じたすべてが、今も身体の奥に残っている。

レースの興奮、会場の熱気、街の匂い。出会った人たちの優しさ。流した涙の味。喉を通ったビールの苦み。

そして、チョコミントアイスの冷たさ。ワイン、コーヒー、フィッシュアンドチップス、ラム肉、ヨーグルト、グルテンフリーのティムタム。

そのどれもが、もう消えることのない記憶。

「世界が広がった」、私の人生への挑戦。

「できない理由がない」と気づいて飛び込んだこの冒険は、驚きと感動に満ちた、ひとつの物語になりました。

衝動から始まった、102kmのロングレース・聖なる大地ニュージーランド編。この章は、ここで幕を閉じます。

そして。

私の冒険は、次の章へ。

この旅で失ったもの

・足の爪
・綺麗なシューズ
・「完璧な旅」のイメージ

この旅で持ち帰ったもの

・102kmの記憶
・泥の感触
・世界は広い、という実感
・次の章への衝動

ニュージーランドのリアル

・人は優しい
・バスは時間通り来ない
・ほぼキャッシュレス
・検疫厳しい
・アイス大きい
・水飲める