旅の2日目。1日目はこちら⇒南北八ヶ岳縦走4日間【編笠山・権現岳・赤岳】キレットから赤の主峰へ Day1 2024.9.23
この日は引き続き南八ヶ岳の横岳2,829m、硫黄岳2,760mに登頂し、夏沢峠を境に北八ヶ岳エリアへ。天狗岳(東2,640m、西2,646m)、にゅう2,352mに登頂後、白駒池のほとりにある白駒荘までを歩くコースタイム9時間の一日。9/24(火)
◇ 旅の行程 ◇
0 東京 ⇒(夜行バス)⇒観音平
1 観音平 ⇒ 編笠山 ⇒ 権現岳 ⇒ 赤岳 ⇒ 赤岳天望荘
2 赤岳天望荘 ⇒ 横岳 ⇒ 硫黄岳 ⇒ 天狗岳 ⇒ にゅう ⇒ 白駒荘
3 白駒荘 ⇒ 麦草峠 ⇒ 茶臼山 ⇒ 縞枯山 ⇒ 三ッ岳 ⇒ 北横岳 ⇒ 双子池 ⇒ 双子山 ⇒ 蓼科山荘
4 蓼科山荘 ⇒ 蓼科山 ⇒ 八子ヶ峰 ⇒ 白樺湖 ⇒(路線バス)⇒ 茅野
雲の海と山
朝の起床は4時。だんだんと日の出が遅くなり、寒さと寂しさに、今年も山シーズンが終わりに近づいているのを肌で体で感じる(早すぎ?!)。いつものように小屋での朝食はパスし、朝5時すぎに出発。既に赤みが差す美しい空に見とれる。夜明け前のグラデーションと見事な雲海だ。
これから横岳へは一旦鞍部まで下り。日の出は5時半、横岳山頂までは辿り着けない。日の出の瞬間を迎えるのにこのまま下ってしまって良いのだろうか、どこか良いスポットはあるだろうか、と悩みながら前へ。どこでも見られそうだけれども、せっかく見るならMyベストを探りたい。でも留まっていると寒い。
途中のちょっとしたピークで陣取るグループ。朝食の準備をしたりなにやらしている。日の出を待っているのですか?と聞いたら、ううーん、まぁそうですね、みたいな曖昧な返事。まぁ、日の出の瞬間以外もずっと奇跡だもんね。
とにかく全てが綺麗なので、この美しい瞬間の奇跡を堪能しながらのんびり進んでいく。
薄暗い中、目の前の道を横切る何かが!犬?いやキツネだ!ほんの一瞬の出来事。フサフサもふもふなしっぽと三角の耳、スラッとした体躯のホンドギツネが私の前を悠々と走り去っていく。ここは自然の、動植物の世界。私も一ホモサピエンスとしてこの景色に参加する。
後にも先にもこの一時しかない瞬間。奇跡が、瞬間が連続して、一日になる。一年になる。人生になる。きっと当たり前のことなのだけれど、日常にいるとすぐに忘れてしまう。山に来て思い出そう。そして何度でも感動しよう。感謝しよう。
一度きりの今日が始まった。楽しんで生きましょう!
情熱の山
横岳までは地図に⚠マークが示されている通り、鎖場など危険個所があるのでヘルメット着用が推奨。荒々しい、情熱の南八ヶ岳の山並みが続く。
八ヶ岳はどこの山を指しているのかというのは諸説あり、八つの峰を定義しているのもあれば、特定の峰ではない定義もあり。「八百万」などと同じように山々が多く連なる様子から「たくさん」という意味で「八」としたとも、幾重もの谷筋が見える姿から「谷戸(やと)」にちなんで名づけられたとも、文字通り八つの峰に見えるからとも、複数のいわれが存在する。(ウィキペディアより)
今回はその中でも主な峰に名前が必ず上がる阿弥陀岳は通っていないので、またいつか。ということで良く眺めておく。むむむ、空に怪しい雲がー!
午前6時半、横岳、2,829m。いつの間にか雲が湧いてきてしまい視界ゼロに。反対側の硫黄岳方面から歩いてきていたお兄さんに写真を撮ってもらった。
これから向かう硫黄岳と北八ヶ岳方面。雲の色がミルキーで幻想的。
硫黄岳は八ヶ岳が約200万年前から1万年前の間に何度も噴火を繰り返した名残である爆裂火口が残っている火山。足元が火山の色になってきた。山の形は、こちら側から見るとのっぺりとしていて穏やかな感じ。
滑りやすい砂地の斜面を鞍部に下っていくと、硫黄岳山荘が。覗いたらすごくオシャレな内装で、ここに泊まりたかったー!次回はここだな。トイレも使えます。
午前7時すぎ、雲が晴れて日差しが出てきた。小屋の前でレインウェアを脱いだり、日焼け止めを塗ったり、サングラスを出したり、身支度をさせてもらう。そして地図ではここまでで⚠マークが終わっているので、ヘルメットもしまっちゃおうね。
石と砂のザレた道を硫黄岳へと登っていく。数メートルおきにケルンがあり、山頂へと誘ってくれる。広く歩きやすい道なので、濃霧の時は迷いやすいのかもしれない。雲と青空の混ざり合う空に、希望と期待を感じながら、一歩一歩。
登りつめて振り返ると、南八ヶ岳オールスターズが眼前に!!!ハイライトきたー!!!
北を見れば、これから向かう北八ヶ岳の山と森が!!!これまたハイライト!!!
八ヶ岳、なめててごめんなさい。素晴らしい景色です。あの奥からずっと歩いてきたという自信や苦楽が、景色をより色鮮やかに最高に彩ってくれる。と、私の目と心はそう見ている。ただ登らずにこの景色を見て思うことと、ここだけ登って思うことと、ずっと縦走してきて思うことは、きっとそれぞれ違うのだろう。その他、いろいろな条件によって、さまざまに違うのだろう。ここに至るプロセスや背景が、同じ景色でもそれぞれ違う景色に見せる。どんな景色を見に行くか、どんな世界に生きるか、何を選ぶか。全ては自分次第で、何でも見たいように見ればいい。望む経験をすればいい。今私が見るのは、私だけの景色、物語、世界、人生だ。
午前8時、硫黄岳、2,760m。この日の絶景に、山頂に居合わせた人たちは皆歓喜、ため息。見とれちゃうよねぇ。だいぶ後ろ髪を引かれながら、先に進みます。
冷静の森
夏沢峠に下り、そこを境にその先は北八ヶ岳。峻険な岩稜帯の南八ヶ岳から、針葉樹の樹林帯や苔や湖沼が点在する北八ヶ岳へと、ガラッと表情を変える。そんな冷静と情熱の間にあるのが、この夏沢峠。
どちらの山小屋もたまたまお休みなのか休業なのか、営業しておらず。トイレも使えません。
そして早速始まる森林浴。まだ絶景の稜線歩きに後ろ髪を引かれているが、気持ちを切り替えて近くの植物たちを楽しむ。
針葉樹のウイニングロード。
木々の間から、この先の根石岳と天狗岳が見える。
夏沢峠への下りで追い抜いたお二人が後ろから来て、今度は先に行ってもらった時にハッと気が付いた。あれ、もしかして赤岳天望荘に泊まっていましたか?と声を掛けると、そうそう!と。夕食の時に隣でしたよね?と、会話をしていないのにお互いに存在を認識していてビックリ。私は白駒荘まで、お二人は高見石小屋まで。歩くペースも同じくらいで、抜きつ抜かれつ、励まし合いながら進んだ。
箕冠山という見晴らしの無いピークを過ぎ、一旦少し下ったところにある根石岳山荘。ちょっと寄り道、いつかのために要チェック。
硫黄岳山荘と雰囲気が似ているな?と思ったら、同じ経営でした。ここもとてもオシャレで綺麗で良いなぁ。トイレも使えます。
午前9時半、一杯お茶でもしていきたい気分ではあるが、やはり気になるのはお天気。今は青空だけれど、前日のことや事前の天気予報を考えるとのんびりしてはいられないので、先に進みます。
根石岳へは10分足らず、ゆるやかに続く道を進む。
根石岳、2,603m。穏やかな登山道から一転、大岩がゴロゴロとした山頂。ここから見えるのは、北八ヶ岳の最高峰、天狗岳。左が西天狗岳、右が東天狗岳の、双耳峰だ。ウィンターシーズンの雪山登山も人気の山域。
そして振り返ると、硫黄岳の爆裂火口壁。穏やかに見えた南側からの表情とは全く異なる、ワイルドな北側の表情。山も人も多面的。いろんな角度から見てみよう。どこも魅力的で良いですねー。
一旦道はまた稜線歩きに戻り、天狗岳まで続く一本道を辿る。鞍部にビーチのような白砂浜が。
ほとんどが穏やかな道だが、東天狗岳の手前だけ少しグッと急になっていて、鎖場や足場が作ってあるところが。荒々しさと穏やかさが入り混じる、グラデーション地域。
午前10時、東天狗岳、2,640m。硫黄岳と天狗岳の間は人が少なかったが、ここはまた人が増える。北八ヶ岳方面と、南八ヶ岳方面をバックに、写真を撮ってもらう。
行動食をもぐもぐしつつ、西天狗岳へ。ここはピストンなので、空身で向かいます。一旦下り登ること20分で、西天狗岳、2,646m。
また20分かけて東天狗岳へ戻り、先へ。だんだん空がガスってきた。中山峠への下り、ルートは2つ。天狗の奥庭を歩きたいのと、黒百合ヒュッテを覗いてみたいので、向かって左、西側のルートへ。
後から出発したお二人も、こちらのルートに歩いてきた。手を振り合う。
秘密の奥庭
大岩がゴロゴロの景色。天狗の庭と名付けられた場所は全国にたくさんあり、秘密の絶景、といったところでしょうか。ここは天狗岳の奥に広がる場所、という意味なのかもだけれど。微妙にガスで見えつ隠れつする空と山と森で、秘密の世界に迷い込んだよう。ドキドキわくわく。
静かでどこまでも広がりを見せるこの場所、俗世との隔たり感がこの上ない。どっぷり浸かり感もこの上ない。とても好みで、うっとりため息が出ちゃう。この日のハイライト第2弾はこの天狗の奥庭でした。
いつまでも歩けそうな景色を全身で堪能しながら、12時、下り切ったところに黒百合ヒュッテ。
ここも泊まってみたいオシャレな雰囲気の山小屋。雨風を凌げて暖を確保できれば基本的にはOKな私ですが、やはりオシャレな場所は気になる。それが山ガールというもの。またいつか。
小屋の近くでスタッフさんが木道の修理作業中。頭が下がります。大いなる感謝。もしも失業してどうしようもなくなったら、山小屋で働こうと思う。本当に。
中山峠を通過し、中山のピークを踏み、にゅうへと進む。ここからはもうずっと樹林帯で、足元の苔が楽園状態。鹿もいた。
12時半、中山の展望台では、すっかり空はガスに覆われ何も見えなくなっていた。
樹の模様が顔に見えるあるある。想像力が逞しいと、こういうのも楽しめる?それとも怖くなる?
中山から1時間、この森歩きなかなか長く感じるな?!と思い始めた頃ににゅうが見えてきた。
にゅうなのか、ニューなのか、乳なのか。答えは、全部正解。全ての標識がありました。
13時半、にゅう、2,352m。少し待っているとたまに風がガスを流してくれ、開放的な景色がそこに。
北八ヶ岳の山と広がる森、高原の爽やかさと穏やかさ。この広大な樹海、人間なんてほんのちっぽけな存在。私なんて道に迷ったらすぐに死んでしまうだろう。自然の圧倒的存在と力に、畏怖の念が湧いてくる。真ん中あたりに見えるのはこの日の宿泊地、白駒池。
この日最後のピークをしばらく楽しんだ後は、森の中をひたすら下り、歩き、あの白駒池まで。遠いな。約1時間の道のり。
疲れて足の運びが雑になり、倒木にすねをぶつけて出血する。一人山旅は自己管理が大事。リスク、体調、計画、行くも止めるも全てが自己責任であり、自分次第だ。私が遭難してもすぐには気付いてもらえないというデメリット(?)はあるが、いろいろなリスクを乗り越えて行く体験や経験、そしてやり遂げて得る自信は、誰のものでもない私のもの。一人山旅ほど自分を高みに導いてくれるものは無いと思うんだよなぁ(山ガール調べ)。
14時、この日の宿泊地へ無事到着。2018年に建てられたとても綺麗な新館の白駒荘。標高は2,115m。
苔と池の宿
食堂からは白駒池が一望。お風呂に床暖と、快適そのもの。シャンプーや歯磨き粉が使えないことや、相部屋なこと(個室もあるよ)すらなかったら縦走山旅の途中ということを忘れてしまいそう。充電も出来るし、綺麗なシーツのふかふかのお布団。何より山ガールが好きなオシャレ度が5000点満点。
八ヶ岳が一望できる絶景の場所にある自家菜園で育ったというお野菜で食事を提供してくれている。
荷物を下ろし、ここらで一息カフェタイム。珍しいほおずきレアチーズケーキと、信州ぶどうジュース。ほおずきは自家製。これ食べにだけ来れるクオリティ。ものすごく美味しかった!!!
白駒池は国道脇の駐車場からほぼ平坦な道を歩き15分という立地。日帰りで来ている人がほとんどで、皆さんここでソフトクリームを食べたり、お土産を購入したりしていた。ぜひ白駒池の思い出に、お立ち寄りください。大切な人と泊まりも超オススメ!
赤岳天望荘から一緒だったお二人が最後、白駒池までお散歩に来ていて、お姉さんの方と一緒に写真を撮っていただきました(もうお一方はお兄さん)。山での心温まる出会いは私の一人旅を豊かにしてくれる。きっとまたどこかで。ありがとうございました。
小腹を満たした後は、白駒池の周りをお散歩。40分ほどなので、暗くなる前にサクッと行ってしまいます。木道が整備されてとても歩きやすいですが、ドロドロの場所もあるので、登山靴は必須。
苔がお見事。この美しい苔と原生林を後世へ。みんなで守っていきましょう。
一周散歩から帰ってきた後はお風呂へGo。体も心も温まる。汗を流せるだけでHPが回復するわぁ、と思っていたのだけれど、シャワーもお風呂も無い山小屋の時よりも翌朝に疲れが。体の緊張が一瞬解けてしまうのでしょう。私の縦走山旅は終始緊張の交感神経が過ぎるということに気が付きました。体に悪いわよ。何はともあれ、お風呂はとってもありがたいものです。
17時半、夕食はこれまた超豪華!ちゃんと野菜の説明などもしてくれ、一般的な山小屋クオリティを遥かに超えた白駒荘クオリティ。脱帽です。
どれも美味しい!栄養満点な味がする!全ては食べ切れず残してしまったのが残念すぎる。胃袋鍛えてまた参ります!
18時をすぎると辺りは暗くなり、空には星たちが。いつもは(体が冷えるのが嫌なので)あまり星空を見に出ない私も、この宿の暖かさにすっかり安心して、外に何度か鑑賞に出掛けました。暖かいって幸せ。暖かいって正義。
静寂の暗闇が訪れ、就寝。カメラやスマホ、時計の充電を満タンにするのを忘れずにね。
旅は楽しいまだ2日目。もう2日目。早くも折り返し地点だ。始まるといつもあっ!という間。疲れて帰りたい気持ちもありつつ、ずっと楽しみにしていた旅がどんどん終わっていく寂しさ。少しでも長く深く濃く強く、最高に楽しみたい。やっぱり私にはどっぷり山に溶け込む長い旅が合っているのだろう。道のりは長くハードだったけれど危険は無く楽しく歩いてきた2日間。果たして3日目はどんな景色が、どんな体験が私を待っている?どんな気持ちが湧き上がってくる?!Day3に続く⇒南北八ヶ岳縦走4日間【茶臼山・縞枯山・三ッ岳・北横岳・双子山】地獄の岩から天国の広場へ Day3 2024.9.25