一筆書き
一つ一つの山々は日帰りでも行けてしまう手軽な山域、八ヶ岳。手軽さゆえにいつも人が多いイメージ。そしていつでも行けてしまいそうなイメージ。日帰りや1泊程度で何度か訪れたことはあったものの、あまり知らない山域のままだった。この夏も友人たちと日帰りで行こうという話になり、地図を改めてしっかり見たら、縦走好きの血が大騒ぎ(!)し、ズバッと一筆書きの山旅をやってみたくなる。日帰りでは見えない絶景がきっとあるはず!と、南北八ヶ岳にどっぷり浸かる3泊4日の縦走山旅へ。9/23(月)-26(木)
南は編笠山から、北は蓼科山、八子ヶ峰まで。総移動距離は47キロ、累積標高差4,300m。コースタイムは1日8~9時間程度。いくつも山を越えアップダウンがあるが、南アと比べると次の山までが近い。山小屋がたくさんあるので、体力に合わせて縦走計画が出来る貴重な山域だ。縦走初心者にオススメと言える◎
絶景山旅の開幕だー!
◇ 旅の行程 ◇
0 東京 ⇒(夜行バス)⇒観音平
1 観音平 ⇒ 編笠山 ⇒ 権現岳 ⇒ 赤岳 ⇒ 赤岳天望荘
2 赤岳天望荘 ⇒ 横岳 ⇒ 硫黄岳 ⇒ 天狗岳 ⇒ にゅう ⇒ 白駒荘
3 白駒荘 ⇒ 麦草峠 ⇒ 茶臼山 ⇒ 縞枯山 ⇒ 三ッ岳 ⇒ 北横岳 ⇒ 双子池 ⇒ 双子山 ⇒ 蓼科山荘
4 蓼科山荘 ⇒ 蓼科山 ⇒ 八子ヶ峰 ⇒ 白樺湖 ⇒(路線バス)⇒ 茅野
天気予報は4日間、とても微妙だった。後半の2日はうっすら雨予報、でも回復傾向。前半2日も快晴とはいかなそう。他の地域もチェックしていたが、ここなら確実に良い!と言える地域が無く、祈りながら八ヶ岳決行を心に決める。
前日の仕事を終え、午前0時過ぎ、夜行バスに乗る。そして登山口には午前4時着。乗車時間が短すぎて全く眠れず、不眠のまま山旅はスタート。
観音平、標高1,560m。連休だけあって駐車場はほぼ満車、賑わっている。さすが八ヶ岳。端っこに待機し、身支度をしながら夜明けを待つ。空が少し明るくなり始めた午前5時すぎ、出発。グループ登山者が多く、わいわいとした雰囲気だ。
この日は編笠山2,523m、権現岳2,715mに登頂し、キレットを越え、八ヶ岳主峰の赤岳2,899mに登頂、そこから少し下った赤岳天望荘までを歩くコースタイム8時間半の一日。9/23(月)
薄暗い中、ヘッドランプの灯りを頼りに進んで行く。周りに人がいるのと、だんだんと明るくなっていく朝なので何も怖くはないが、青年小屋(この先の山小屋)のご主人が以前テレビで「山の怪談」を話していたのを思い出す。怪に遭遇したのはこの登山道だろう。日が暮れていくところじゃなくて良かった。
樹林帯の上りが続き、着実に高度を上げていく。樹々の間から太陽の光が差し込んでくる。午前6時、雲海というポイント標高1,851mから雲海を望む。雲は多めながら晴れ。
潤いの緑
標高2,000mくらいから苔むした岩ゾーンに突入。きのこもたくさん。苔エリアは北八ヶ岳の方が広大で有名だけれども、ちゃんとここも苔のThe・八ヶ岳の雰囲気。潤いの森。
下りは一切なくひたすら上り。振り返ると樹々の間から南アの山脈が。雲に隠れそうだよー早く頂上に行かなくちゃ!
森林限界が近付いてきた頃、見えて来た岩だらけの広い山頂。午前7時半、編笠山、標高2,523m。この編笠山は3度目の訪問。毎度快晴の相性の良い山です。360度の大展望、名だたる山々が一望のとても良い山。登山口からも程よい強度で、確かに日帰りでこの景色が見られるなら十分素晴らしい。この日も良い景色をありがとう。
これから行く権現岳、赤岳。ちょっと怪しいガスが湧き始めている。
2日後に歩く北八ヶ岳の稜線、3日後の朝に登頂予定の蓼科山まで一望。近すぎて全部が一枚の写真に収まらない。
南アはすっかり雲に隠れてしまった。北アや中ア、御嶽山などはまだ綺麗に見えている。
9月も後半だというのに激暑だったこの日。日差しはかんかん、汗はダラダラ。ガスが湧くのも早すぎて、これでは盛夏そのもの…。暑さ、ガス、夕立などを避けたくて9月後半まで待ったのに、やはり今年は暑すぎるらしい。来年以降はもっと暑くなるのだろうか。今後の地球環境の変化が恐ろしい。
編笠山の山頂は人がどんどん押し寄せてくるので、写真を一通り撮ったら先へ進む。
岩稜と急登
岩々の急坂を下っていくと、青年小屋が見えて来た。
以前泊まったことがある青年小屋、この日は通過です。朝来た人なのか、泊まっていた人なのか、既に小屋の前のテーブルでは宴会が。遠い飲み屋だもんね。私も早くビール飲みたい。
小屋から往復10分ほどの水場、乙女の水まで行き水を汲み、もぐもぐタイムを済ませ、先へ。
振り返って編笠山。笠のような丸い円錐形のかわいい山。
権現岳への上りはガレ場も鎖場もあり、南八ヶ岳の荒々しい岩稜帯、急登の様相が。峻険な峰々も眼前にそびえます。
権現小屋と権現岳。既にガスが掛かってきてしまったー!
赤岳方面への稜線が見えてきた。以前この景色を見た時に、いつかこちら側に歩いて行ってみたい。と思っていたのが、遂にこの日叶う。ガスが無ければもっと最高なのに!
午前10時、権現岳、標高2,715m。ここは2度目の訪問。狭い岩稜の山頂で、一番高いところに行こうとすると渋滞中。適当に写真を撮って、赤岳方面の分岐まで折り返す。
憧れのキレット
権現岳から赤岳への稜線は、八ヶ岳キレットと呼ばれる岩稜帯。厳しい下りが始まるので、ここでヘルメットを着用。下り始めてほどなくして、有名な長い梯子に差し掛かる。ゲンジー梯子だ。61段、20mもの長さがある。高度感がありなかなかのスリル。こういう場所は怖がりながらもすごく楽しい。
無事に通過し、振り返って見てみると、めちゃくちゃ長い!
30分ほどで、途中のピーク旭岳へ。
振り返って権現岳と歩いてきた稜線。憧れのキレットを歩いている実感がふつふつと湧いてくる。
編笠山ほど人は多くないが、歩いている人はそれなりにいる。挨拶を交わす時に話してみると、日帰りで周回やピストンをしている人が多いようで、ずっと縦走していく人は少ないよう。南八ヶ岳を1日で駆け抜けるチャレンジもよくやられているようだ。体力持て余しているのね。
午前11時過ぎ、ツルネという開けた場所から。ガスの間から赤岳が見える。
荒々しい山肌がカッコイイ!左から阿弥陀岳、中岳、赤岳。
午前11時半、途中にあるキレット小屋へ。今年は営業していない様子。今回計画を立てる際に問い合わせをしたら、やっていないとのことだった。山小屋はたくさんあるが、ここのように営業していないところも多数ある様子。そしてそうなると当然トイレなども使えないので、注意が必要。水場はあるようだったが、私は足りているので通過。
赤い核心部
ここから2時間、赤岳へと登り返すのがこのキレットの核心部。赤岳の名前の通り、赤い岩の急斜面が出てくる。崩れやすく、落石注意。下りの方が滑りそうで怖そうだ。
なんだか近そうに見えるのに全然近付いてこない…。すぐそこな感じに思えるのは全くのまぼろし~!急峻な赤い岩稜帯の登りは続く。歩幅を狭く、細かく足を運んでいく。だんだん疲れも溜まってきて、4日分の装備の重さが背中にグッと圧を掛けてくる。
キレット小屋から登り始めて1時間、ようやく赤岳の形がきれいにはっきり見えるところまで登ってきた。緑と岩稜のまだら模様。厳しさ荒々しさカッコ良さを見せつけてきますなぁ。
以前来たことがある、真教寺尾根の分岐まで辿り着いた。辺りはすっかりガスに囲まれてしまった。
八ヶ岳はたくさんのコースがあり、どれも整備が行き届いているようなので、いろんなコース取りが可能。楽しみ方は無限大。
13時すぎ、赤岳、2,899m。登頂しました!
本当は360度の大展望なはず。でも辺りは既にガスで真っ白。少し様子を見るも、晴れ渡るチャンスはどうやら無さそう。だいぶ疲れたし、山荘へ行ってしまいます。
赤岳には赤岳頂上山荘という山荘がある。高い山の頂上、360度の大展望なら、夕日や日の出を見るには絶好の場所。でも先が長いのでほんのちょっとでも進んでおくのはどうか(とたぶん計画時の私は思ったはず)、ということで、山頂から20分下ったところにある、赤岳天望荘へ。
赤岩のガレ場を慎重に下っていくと、20分でこの日の宿泊地。
夜の幕引き
真夏のように暑いのに、まだ日が高い時間でもやはり3,000m近くなると肌寒い。14時、早々とチェックイン手続き。
チラッと見えた宿の台帳、私の名前が2番目に。どうやら予約日時の順に並んでいるようで、私は3ヶ月前の6月下旬、1番目の方は6月始め頃の日付が入っていた。お互い3ヶ月越しの念願の山域に来られて良かったね、と心の中でエールを送る。
変わった作りの小屋で、新館と旧館が地下のトンネルのようなもので繋がっている。トイレはきれい。乾燥室にはストーブが焚いてあり、汗で濡れ冷えた衣類はすぐにカラカラに。コロナ騒動以前は五右衛門風呂を用意してくれていたようだが、今は休止中。
荷物を下ろし着替えて、食堂で休憩。食事を取りたい気もするが、たぶん夕食が食べ切れない予想なので、ビールとおやつにする。
編笠山で写真を撮ってくれたお姉さんがくれた芋と栗の高級おやつ。地元山梨の方で、日帰り登山にいらしていました。私が北まで縦走すると言ったら、応援にくださった。真夏よりは微妙に食欲があり、持参した食料では足りないかも、というのもあり、とても助かりました。ビールはモンベルカードの特典でなんと1本貰えた!ラッキー♪
そこから何をして3時間ほど過ごしたのか思い出せないが(たぶん寝たような気がする)、17時、山小屋の夕食。一人静かにいただく。真夏よりは食欲があると言ったものの、やはり難儀する私。肉やご飯は食べ切れなかった。どうしたら私の胃は夏バテに勝てるのだろうか。
隣の方の会話が聞こえてきて、翌日どうやら私と同じくらいの場所まで縦走していくお二人が。ただやはりほとんどの方が縦走ではない様子。
夕日が沈む瞬間は雲に隠れて見えず、その代わりに映画のオープニングのような雲がそこかしこに。
幕開けではなく、もうこの日は幕引きなんですけどね。
昼間は真夏のようなのに、夜はもうすっかり晩秋の気配で、長く外には居られない。山の夏は短く、この秋も瞬く間に過ぎ去っていくのだろう。布団にもぐりこみ、山小屋のありがたさを感じる。もしテントだったら寒くて寂しくて死んでるかも。
特にすることもないので、19時頃就寝。前日夜行バスで眠れていないので、体力回復に努める。
翌日は引き続き峻険な南八ヶ岳エリアの横岳、硫黄岳を越え、夏沢峠を境に穏やかな北八ヶ岳エリアへ。天狗岳やにゅうを越え、白駒池まで。どんな絶景に出会えるだろうか。お天気持ちますように。Day2へ続く⇒南北八ヶ岳縦走4日間【横岳・硫黄岳・天狗岳・にゅう・白駒池】情熱の山から冷静の森へ Day2 2024.9.24