神様と精霊の森
屋久島旅の4日目(縦走山旅の3日目)。3日目はこちら⇒屋久島縦走【宮之浦岳】九州最高峰、世界自然遺産の山へ Day3 2024.4.9
この日は縄文杉を見て、大王杉やウィルソン株などの巨木の森を抜け、目当ては太鼓岩からの山桜の花見。そして旅のゴール、苔の楽園、白谷雲水峡へ。コースタイム8時間。そして最終便で帰路へ、屋久島旅フィナーレの一日。4/10(月)
◇旅の行程◇
1 東京 ⇒(飛行機)⇒ 屋久島空港 ⇔(路線バス)ヤクスギランド、屋久島自然館
2 屋久島空港 ⇒(路線バス)⇒ 紀元杉 ⇒ 淀川登山口 ⇒ 淀川小屋
3 淀川小屋 ⇒ 花之江河 ⇒ 黒味岳 ⇒ 宮之浦岳 ⇒ 永田岳 ⇒ 新高塚小屋
4 新高塚小屋 ⇒ 縄文杉 ⇒ ウィルソン株 ⇒ 楠川分かれ ⇒ 太鼓岩 ⇒ 白谷雲水峡 ⇒(路線バス)⇒ 屋久島空港 ⇒(飛行機)⇒ 東京
ジブリ映画の「もののけ姫」が大好きだ。アシタカの“生きる”に向き合う真剣さと力強さ。描かれる自然の優しさと厳しさ、生と死。あの世界観、シシ神の森はまさにここ、コダマがあの枝の上に、と思えるような、この森。
アシタカの感動の名セリフ集
“曇りなき眼で見定め、決める。”
“押し通る!邪魔するな!!!”
“まだ終わらない。私たちが生きているのだから。”
“生きろ。”
この、もののけ姫の “生きろ。” というメッセージ。
生きてこそ、何よりも命が大事、死んだらおしまいだ。
ではなく
“お前であれ” “お前の人生を生きろ”
と。この森にいるとそう言われているようで。
私は私を生きる。
朝5時すぎ、夜が明けきる前に出発。暗いので小屋を出ていきなり迷いそうになる。次々に道沿いに現れる立派な屋久杉たちに近付きあいさつし、期待とともに縄文杉へと歩を進める。
木道が敷かれているところ、丹沢みたい。それにしてもこんな中を歩いているなんて本当に夢みたい。
ここは縄文杉に一番近い避難小屋、高塚小屋。標高1,330m、定員20名ほどの小さな小屋。
縄文杉
新高塚小屋から1時間、高塚小屋から5分ほど下ると、いらっしゃいました、縄文杉。標高1,300m。
午前6時すぎ、朝もやにけむる中、縄文杉がそこに。樹高25.3m、胸高周囲16.4m、推定樹齢2,170年。著名な巨樹の中では高さも周囲も大きく、保護のため遠くからしか見られないけれど、それでも分かる圧倒的存在感。大人が13人手をつないでようやく抱えられる幹周り。
日帰りで縄文杉トレッキングに来る観光の方々が居ない時間帯なので、山の中に居た人だけの独り占め時間。
横のテラスで鑑賞していたら、太陽が。
改めて、日の光を浴びた縄文杉。
10年前に友人とここに来ましたが、その時も奇跡の晴れ。また会いに来れた。
ここでたっぷり1時間過ごしました。もやもやの幻想的な姿も、太陽に照らされた輝く姿も、いろいろな姿を見られて本当に良かった。これも自力山旅ならではの自由な時間の過ごし方。大好き。
もっといくらでも過ごせたけれど、この先もまだ長いので後ろ髪を引かれながら先へ。また来る。
巨木の森
ここからはさらに整備された道が続く。縄文杉までの日帰りトレッキングでも十分、この森を体感できるでしょう。
途中すれ違った、日帰りであろうドイツ人の彼、この森を「amazing、great、energy.」(接続詞は全く聞き取れていません)と言っていました。そうね、アメイジング!命あるうちにご体感を。
アップダウンは少しある。日帰りトレッキングとは言っても、日頃歩いていないと難しそう。荒川登山口から往復22km、10時間の道のり。
コダマ見つけた!見える?目と口があるように見える!
こちらは夫婦杉。2本の巨木の枝が10m程の高さでつながっている。杉は融合しやすいがこれほど高い位置でつながっているのは珍しいらしい。夫婦のような姿からこの名前に。
そしてこの夫婦杉を過ぎると、世界自然遺産の地域が終わる。十分体感、ありがとうございました。
こちらは大王杉。縄文杉が知られるまでは最大の屋久杉とされていたそう。だから「大王」樹高24.7m、胸高周囲11.1m、推定樹齢3,000年。立派なお姿です。
その他にも無名の巨木がたくさん。
この日も良い天気だねぇ。
森のハート
縄文杉から1時間で、これまた著名なウィルソン株へ。標高1,030m。300年程前に伐採された切り株で、中は大きな空洞になっている。屋久島では一番古い切り株なんだとか。
枯れてもなお、残り続ける自然の造形美。この辺りで日帰りトレッキングの方々が続々と。午前8時過ぎ。
撮影を楽しみ、次へ。翁杉。
そこから程なくして、山道の大株歩道は終了。ここからはトロッコ道。標高920m、下ってきました。
伐り出した屋久杉や資材などを運搬したトロッコ。かつては山仕事で生計を立てる人々が住む集落もあった。今は歩道になっていて、しばらく淡々とした道が続きます。
新緑とお花見
新緑が目に鮮やか。お花も咲いています。名前の付いた屋久杉もいくつか。
と、歩きながらここで何かに気付く山ガール。桜の花びらが多くないか…もしや全部散っている…?いや、本当は初日から気付いていた。たぶん遅かったのだと。
それでも一縷の望みをかけて歩くのだ。
単調なトロッコ道にすぐに飽きてくる。いや、良い道なんですよ、景色も楽しい。けれど起伏が欲しいという贅沢さよ。
1時間ほどで、分岐の楠川分かれへ。標高720m。直進すれば小杉谷集落跡、荒川登山口へ。私は左の道、白谷雲水峡方面へ。
生命の庭
ここからは再びの登り。足元の緑が濃くなってきた。苔がたっぷり。
岩の上に木が生えている光景がいくつも。わずかな水と栄養で発芽し、その下の大地に向けて根を伸ばす。厳しい環境でのすさまじい生命力よ。
軍艦のような大きな岩も。面白い光景がいくつも。あの下が登山道なのだけど、落ちないのね…すごい構造。
そして白谷雲水峡エリアに突入。看板に、私が歩いてきたルートそのものが書いてあった。
最後のピーク、太鼓岩へいざ。
午前11時、辻峠から10分ほど急登を登り上げると太鼓岩に到着。標高1,050m。白谷雲水峡最奥にある花崗岩の巨石がこの太鼓岩。10年前は雨で何も見えなかったここからの景色。前日に縦走してきた山々が見える。ちょっともやもや雲がかかっているけれど。あぁ、良く歩いたなぁ。
山桜が咲いていればピンクの景色が広がる、太鼓岩の展望台。今回は新緑の景色。
ガイドさんと共に歩いてきた観光の方々が来ては返す。
居合わせたガイドさんに(迷惑にならなそうなタイミングを見計らい)話しかける。「山桜ってもう終わってますよね…果たしていつなんでしょう?」今回のピークは1週間前、そこからずっとお天気が悪く、雨風でほとんど散ってしまったとのこと。最近は3月終わりくらいになっていますね、と。お花の時期はその年にもよるのでバッチリ合わせるのは難しいけれども。
でもガイドさん曰く、この桜の後の新緑の鮮やかなこの時期が一番良いですよ、と。毎年リピーターさんがいて、この新緑をお目当てに来るそうだ。うーん、一番良いと言ってくれるのならば。お花見は逃したけれど新緑はしっかりゲット、良かったということで。何よりこの眺望があっただけで満点。
この旅の目当ての一つだった場所。そして高い場所からの眺望はここが最後。景色を、風を、全てを、目に、心に刻み付ける。
白谷雲水峡
太鼓岩でゆっくり20分ほど過ごした後は下り、辻峠でお昼休憩。白谷雲水峡入口から2時間後に出るバスに乗るべく、最後の歩き。
椿も時期だったよう。お花がたくさん落ちていました。
苔むす森と名のつけられた場所はこの辺り。通りすがりのガイドさんの解説が耳に入ってきたけれど、タタラ場のモデルになったのがこことのこと。シシ神の森じゃなくてタタラ場なんだ?
白谷小屋は泊まるにはちょっと怖そうだけど、中を覗いてみたら電気が付いた。
この先でいくつかコースが分かれていて、10年前に来た時は大周りする奉行杉コースへ。雨なのにたくさん杉が見たくて欲張ったら、とても大変だった。渡渉ポイントがいくつもいくつもあって、最後はドボンしなければ渡れない程増水した流れの速い沢が…。引き返したら帰りのバスに間に合わなくなってしまう、そしたらその後のフェリーも飛行機も…。でも進んだら死にそう…!
そこで友人が「大丈夫、アシタカもこんな川渡っていたよ。」う、うん!行くよ!
友人とアシタカに励まされ、無事に渡り切り、白谷雲水峡の入口に戻った時には奉行杉コースは増水注意で通行止めになっていたのでした。無理するな危険!
この日はそんなに時間が無いので、最短コースを。思い出の沢はまたいつか。
午後1時すぎ、白谷雲水峡入口へ。無事に全ての行程を踏破しました。お疲れ様でした。
白谷雲水峡は立派な屋久杉や苔の森、沢など、ぎゅっと見どころが凝縮されていて、手軽に屋久杉の森を体感するにはとても良い場所。ただしちゃんと山道なので、それなりの装備と体力を。
この旅の数日前に、「屋久島に行く」と周囲に話していたところ、「屋久島で骨折して帰ってきた」という方がいて、それが私にとってかなりの注意喚起となり、安全に安全にと心掛けながら歩く道中でした。お陰で私は無事に無傷で帰還。山中の怪我は命にかかわることがあるので、改めて気を引き締めて。
満天の世
ずっと一緒のルートを来たお姉さまも無事に到着し、ここからは路線バス。白谷雲水峡13:45発、小原町で乗り換えて、大川14:34着。
空港に行く前にお土産の調達を、ぷかり堂へ。ちょっとおしゃれなお土産屋さん。空港から2つ先の大川バス停が近い。屋久島はそうそう来られないから、たくさん購入して後日配送に。地ビールにたんかん酒、たんかんジュース、手ぬぐい、黒糖などなど。屋久杉のお箸もね。
畳のスペースを貸していただき、地ビールとたんかんアイスをいただきました。祝杯㊗
日焼けした顔だわ。シミが増える~
そして空港の目の前にある縄文の宿まんてんで入浴。とてもきれいなお風呂でした。3日分の汗を流しすっきり。
初日にお世話になったラクサホテルに立ち寄り、ガス缶を託して帰る。このホテルで使いかけのガス缶を頂いたのだけど、私も使い切らず余った。次の方へ、私のような方へまた、と。飛行機には持ち込み不可、多くの登山者がこの島で調達しこの島で処分して帰ることになるガス缶。繋がっていきますように。重ねてありがとうございました。
帰りの飛行機に乗り込む瞬間、振り返って屋久島空港。背景も山々しい。島だけど山な屋久島。
遥かな時の流れ、命溢れる山と森で、大地を踏みしめ、緑の風に吹かれて、湧水に喉を潤し、星空に眠る、最高の旅が終わってしまった。
帰りの飛行機は遅れることもトラブルも何もなく、すんなりと帰してくれました。神様、ちょっとは引き留めてくれないのー💔笑
最終便屋久島午後7時発、自宅には午前0時頃到着。翌日は朝から仕事。屋久島のエネルギーのお陰で疲れもなく元気いっぱいに。屋久島にいた私も、横浜にいる私も、どちらも同じ私。屋久島の自然も、横浜の都会も、同じ地球上の出来事。全ては統合され、どこにいてもいつでも、感じたいものを感じることが出来る、世界の奇跡。
やっぱり世界遺産になったな、私。
次が考えられないくらいの余韻に浸っていますが、きっとまた次の山に向かって生きて行くのでしょう。次の山旅へ続く!