南アルプス北部大縦走5日間【蝙蝠岳・塩見岳】日本9位の高峰と美尾根へ Day4 2024.7.31

旅の4日目。3日目はこちら⇒南アルプス北部大縦走5日間【仙丈ヶ岳・仙塩尾根】静穏なる悠か森へ Day3 2024.7.30

この日は仙塩尾根の続き、安倍荒倉岳、新蛇抜山などの小ピークを越え、大展望の北荒川岳へ。北俣岳分岐まで登り上げ、その後蝙蝠岳2,865mをピストン、塩見岳3,052mに登頂し、塩見小屋2,760mまでを歩くコースタイム11時間の長ーい一日。7/31(水)

◇ 旅の行程 ◇
1 小淵沢 ⇒(登山タクシー)⇒ 尾白川渓谷 ⇒ 七丈小屋
2 七丈小屋 ⇒ 甲斐駒ヶ岳 ⇒ 摩利支天 ⇒ 仙水峠 ⇒ 北沢峠 ⇒ 小仙丈ヶ岳 ⇒ 仙丈小屋
3 仙丈小屋 ⇒ 仙丈ヶ岳 ⇒ 大仙丈ヶ岳 ⇒ 三峰岳 ⇒ 熊ノ平小屋
4 熊ノ平小屋 ⇒ 北荒川岳 ⇒ 北俣岳分岐 ⇒ 蝙蝠岳往復 ⇒ 北俣岳分岐 ⇒ 塩見岳 ⇒ 塩見小屋
5 塩見小屋 ⇒ 三伏峠 ⇒ 鳥倉登山口 ⇒(登山バス)⇒ 伊那大島 
山ハイ

前日、食事も早くに終えてしまった後は、眠くなりすぐに眠った。17時とかそんなんじゃなかったかと思う。山小屋は団体さんで賑やかだったが、夜は皆寝静まりとても静か。広さのわりに人数が少ないせいか、夜中に肌寒くなり下に敷いた毛布を上にかけ直した。寝たり起きたりを繰り返し、この日も午前3時すぎに起床。食堂に下りてしまおうかと思いきや、隣のお姉さまも起き出し、その他周囲の方もゴソゴソ準備を始めているので、そのまま寝床で準備開始。

お姉さまのやっている百高山、この日の行程に5つあるらしい。蝙蝠岳もその一つ。蝙蝠尾根は山友さんに「行く価値あり、美尾根」と推奨され、美尾根好きとしてはこれは行かねば!なかなか行けない場所だし!と思い行程に組み込んではみたものの。寄り道(+往復で4時間)という形になるので、どうしても辛かったらパスという選択肢も…ある。

こうなってくると本当に自分との戦い。行かなくても良い、でもせっかくだから行けるなら行きたい、でも疲れた。さぁどうする私!

夜明け前

とりあえずこの日の行程はコースタイムにして最長の11時間、希望は残したい。ということで、午前4時すぎ、月が輝く空の下、出発。

しばらく樹林帯の中なので、この日の日の出は拝まない予定。でも明るくなってくる空がとても綺麗だ。

朝の空

出発からわりとすぐに、熊ノ平小屋で働いていたお姉さまが私を追い抜いて行ったのだけれど、「こんなに綺麗な空の日は久々だ」と言っていたので、とても良い一日に違いない。この日は小河内岳まで行くそうだ。本当に皆健脚。

仙塩尾根と塩見岳

小屋から30分で安倍荒倉岳へ。百高山、標高2,693m。樹林に囲まれた地味なピークですが、ちゃんと登頂しました。

安倍荒倉岳

ちなみに百高山は上から順に高い山というわけではないそう。でも全国に点在する百名山と比べると百高山はここアルプスエリアに集中しているため、達成しやすいのだとか。

午前5時前、日は完全に出て来た。木漏れ日がもう既に暑い。日焼け止めを塗って進む。

おはようございます
夏空
夏のどこかへ

この日目指す塩見岳が青空に映える。最初のピーク、2日目の甲斐駒から見た時はとても遠く、どれが塩見岳かよく分からないほどぼんやりとただただ「遠いなー」という感じだったが、この日登るというところまで来た。人間の足はやればできる。どんなに遠くに思えても、ここからだって若干遠く思えるが、歩いて歩いて辿り着けるのだ。近道は無くて、むしろ近道なんてもったいなくて、ただ一歩一歩の積み重ね。それだけだ。

青空と塩見岳

そして午前5時半、新蛇抜山へ。百高山、標高2,667m。展望の良いピーク。仙塩尾根の起点、仙丈ヶ岳も見えた。

新蛇抜山

この少し手前で、私より30分遅く出発した山ハイお姉さまに追い抜かれる。スリムだから体が軽い感じなのか。速いのうらやましい。

そしてテント泊装備70Lかそれ以上くらいのザックを背負った学生さんらしき男子も、私を追い抜いていく。重装備なのにすごい。9泊くらいの想定で南アルプスを歩いているのだとか(実際は7泊くらいになりそうと)。

私は重い荷物が苦手なので、軽量化を頑張っている最中です。4泊5日縦走でも35Lザックだ。意地でも増量しないんだから。なんならもっと軽量化するんだから。

新蛇抜山から

そして再び樹林帯へ。コバイケイソウロードは本当に大好き。咲いている時に来たいなぁ。

コバイケイソウの葉

アップダウンを繰り返しながら、午前6時半、北荒川岳へ。百高山、標高2,698m。素晴らしい大展望!この日のハイライトはこちらです!

北荒川岳から

大崩落した斜面と、塩見岳の大迫力!緑と茶色の模様、大地の起伏、透き通る青空と薄雲、吹き抜ける風。この星はなんと美しいのだろう。この世の絶景は山にあり(山ガール調べ)。

歩いてきた仙塩尾根

たった3,000m程度だけれど、ちょっと世界を見下ろす高さまで登ってくると、ほんの少し宇宙に近づくのだろうか、普段の都会の生活では意識しない地球の活動が見えてくる。そして全てが奇跡の瞬間であることに気付く。

ずっと辿ってきた仙塩尾根が後ろから勇気と自信をくれる。ここまで歩いてきたからこそ見られる景色。その景色の中に私がいる。これまでの努力と思い出が、胸をじわじわと熱くする。

美尾根へ

絶景ハイライトを何時間でも堪能したい気持ちをグッと堪えて、先へ。この日は夏の気圧配置でとても暑くなる日、お昼頃になるときっとガスで一面見えなくなる。その前に美尾根に、できたら塩見岳まで辿り着かねば。

体力は限界に近く、行けないかも…と漏らしていたら山ハイお姉さまに「絶対大丈夫だよ~」と励まされ。そしてさらに「蝙蝠岳の山頂で写真を撮って欲しい」と最後の一押しが!これは行かねばならない感じだ…!

真夏の南アにだけ咲く花、タカネビランジの株(ピンク)を発見。昨年荒川岳で見た株は白だった。高山植物のたくましさに励まされる。

タカネビランジ

昔キャンプ指定地だった場所を通り過ぎる。最後の樹林帯。足元にハクサンフウロがたくさん咲いていて綺麗だったのだけれど、しゃがんで写真を撮る体力は無く通過。

塩見岳へ

北俣岳分岐までの登りがとんでもない急斜面。これも下りは嫌なやつ。落石注意。

テント男子と急斜面

喘ぎながら午前8時半前、北俣岳分岐へ。小休憩し、おやつを食べて荷物をデポ。ここから蝙蝠尾根に寄り道し、蝙蝠岳に登頂する、往復4時間。せっかく塩見岳まで目前というところまで来たのに、離れてしまうぅ。飲み物だけ持って行こうかなと思うも、微妙なガスの湧き具合で雨が降ったら困る。レインの上と飲み物を持ち歩き始める。空身になったのに体は辛いままだ。

北俣岳までの20分くらいの稜線はちょっとアドベンチャー、断崖絶壁プチキレット。

前を歩く山ハイお姉さま

北俣岳から蝙蝠岳へと続く美尾根が眼前に。

蝙蝠尾根

奥の緑のピークが蝙蝠岳だ。蝙蝠が羽を広げた姿に見えるかな?どうかな?

蝙蝠岳

こんな絶景を見せられたら行くしかない。蝙蝠岳には百高山で来ているという方がほとんどだった。美尾根目的は私だけか。

お姉さまは本当に歩くのが早く、同じペースで歩くのは無理。でも山頂であんまりお待たせしたらいけない、と思い力を振り絞り進む。暑くて暑くて、持ってきたレモネード350mlを一気飲みしそうな勢いだったので、節制しながら進む。

道は良く整備されていて、ちゃんと木が刈られていたし、迷う箇所もない。ありがたい。

登山道

ずっと森林限界より上かと思いきや、鞍部は少し樹林帯が。だんだんと辺りにガスが湧き始め、塩見岳が見え隠れするように。でも蝙蝠岳だけは場所が良いのか、ずっと見えている。

午前10時前、蝙蝠岳へ。百高山、標高2,865m。登頂。あいにくガスが湧いてしまった背景と標柱とともに。

やったー

もし一人だったら、疲れとガスを理由に途中で引き返していたかもしれない。お姉さまがいたからちゃんと山頂まで来られた。人の力、影響はありがたいものです。大いなる感謝を。

遠くに来たんだという感慨深さに触れ、堪能した後は、塩見岳へと再び向かう。

蝙蝠尾根と塩見岳
砂礫の丘
山のお友だち

すばしっこいホシガラス。警戒心が強くてだいたい近くにも寄れないのだけれど。初めて写真に収められた。齧られたハイマツの実がたくさん落ちているのはだいだいこの子の仕業。

ホシガラス
イワヒバリを探せ!

斜面に力強く咲く高山植物たち。

ウラジロタデ
斜面はお花がいっぱい

午前11時半、北俣岳分岐まで戻ってきた。荷物を回収し、塩見岳へ。山頂方面はガスに包まれてしまった。

切れ落ちた道

そしてここでオコジョちゃん登場!かわいい!!!

オコジョ

横からみるとイタチっぽさ満点。先を歩くお姉さまにも「オコジョがいる!!!」と知らせ、二人でこの小さな生命体を愛でる。

しばらく登ると山頂が見えて来た。塩見岳は双耳峰で、東峰3,052mと西峰3,047mが。まずは東峰へ。

東峰

12時半、塩見岳山頂へ。日本第9位の高峰、標高3,052m。日本百名山、これで52座目。百高山でもある。

登頂

あちらに見えるは西峰。前日熊ノ平小屋で一緒だった台湾からの団体さんが山頂に。賑やかそうなので、御一行様が居なくなるまで少し間を置いてから向かう。

西峰

西峰の方が低いのに、こちらの方が立派な山頂の様相。

登頂!

あいにく山頂はガスの中。それでも蝙蝠尾根だけは見える。眼前にある荒川三山もガスの中だ。それでも盛夏よりは周囲が見える時間が長く、ここまでで十分景色を堪能できた。2日間かけて歩いてきた仙塩尾根もここで終わり。感慨深く、じっくり最後の瞬間をかみしめる。

制限という幸せ

山頂から塩見小屋方面の斜面は岩のガラ場、鎖場も多数。ポールをしまい、慎重に下っていく。落石注意。

落石注意
滑落注意
三伏峠への稜線

13時半、この日のゴールの塩見小屋へ。お疲れ様でした。

この日の塩見小屋は満員御礼。人気の場所はお天気を見て数日前に予約、というのは難しい。山行は計画的に。

塩見小屋は水場が無く、小屋で購入したペットボトルや缶はお持ち帰り。旅の最後で良かった。

塩見小屋

お姉さまと祝杯。今まで歩いた山の話しなどをする。そこにおじさまが加入。仕事は引退し、いつでも自由に登山に行けるという。だからお天気を見て来たと、そしてせっかくここまで来たからにはこの後はまた中アでも登って帰るかな、と。私からすると夢のような状況だが、現役時代の「限りある休みの間にいかに山に行けるか?!」という方が良かった、というようなことを言っていた。

限りがあることの方が幸せだなんて。でも真理かもしれない。命も若さも限りがある。だからこそ、今をどう生きるか、どんな体験があったら幸せか、ということを真剣に考えるし、実現に向けての行動が力強さを増すのだ。制限という幸せを感じてみる。

己の欲求に従い今を生きるのみ。

お姉さまと乾杯

栄養カロリー満点な食事。副菜はちょっとずつ色んな種類のものが盛られていてとても美味しかった。しかし例によって食欲の無い私、制限時間内に全然食べ切れず、延長戦に突入(次の時間の回が始まるも、端っこで食べさせてもらう)。周りを見渡してもこんな登山者居ないのだけれど。大丈夫か私は。まぁそれでも安全登山をして生きているので良しとする。

食卓では山の話題で大変盛り上がりました。楽しい時間。

ごちそうさまでした

夕食後は夕日タイム。たまにガスが流れて塩見岳の山頂が見えたり、ピンクやオレンジの美しいグラデーションの空が見えたり。居合わせた方々と空を愛でる。

塩見小屋と塩見岳
夕焼け

南アルプス国立公園は今年で指定から60年、60周年記念ステッカーが各山小屋で貰えます。岩の上も土の上も斜面も平原もひたすら歩いて歩いて、雨に降られ風に吹かれ、灼熱の太陽と静寂の月に照らされ、湧水を飲み闇夜に眠り、私は南アルプス国立公園になりました。

無限の感動を胸に。

60周年記念ステッカー

達成の4日目が終了。心残りは一切ありません!疲れ具合は5日中3番目。

翌日の天気はこの日同様晴れ予報。無事に帰れそうで何より。

旅は残り半日。汗まみれで疲れたしもう早く帰ってシャンプーして顔も体も洗って家のベッドで寝たいが全部。果たして5日目の旅路はいかに?!Day5に続く⇒南アルプス北部大縦走5日間【三伏峠~下山】日本最高所の峠とお花畑 Day5 2024.8.1

頑張るぞ🌟